第379話


「エミリアのいうとおりだとして……狙われた理由は?」

「妖精でしょ。ピピンやリリンの可能性もあるし、白虎かもしれない」

「あー、それもそうだったな。結局、王都の再生で貴族たちが捕まって下火に……。おい、エミリア」

「やっぱり同じところで引っかかったね」


そう、そうなるとあの魔導具を使おうとした連中の目的が変わってくる。連中はいったのだ「犯罪者の楽園を作るためにダンジョン都市シティを奪うつもりだった」と。


「おかしいよね。王都の貴族が捕まっても、連中と繋がっているはずがない。犯罪者は王都に入れないし、もし入れるなら王都を犯罪者の楽園にすれば良い。本当に貴族が絡んでいたとして、連中とどうやって連絡を取りあった? 王都から指示役が出てきても、その者は犯罪に加担したとして王都に戻れない」

「家族が実行犯に加わっていた? ……それだと連絡は取れる。しかしそれだったら王都の方が……」

「王都を襲ったジズたちを使役していたという聖魔士くずれはどこへ行った?」

「あの一件は……故意だったというのか?」


ダイバの言葉に黙って頷く。


「ダンジョン都市シティを奪えず。同じ手は使えない。聖魔士くずれが放ったキマイラは一瞬で制圧された。さらに彼が持っていた神獣たちを言葉だけで呼び出しただけでなく解放までしてみせた」

「……エミリア。お前が派手に立ち回ったあれはパフォーマンスだったのか?」

聖魔師テイマーの圧倒的な強さをバカな連中に教えるために」

「あそこまでした理由は?」

「ダイバ。……あの聖魔士くずれは?」

「どう、とは? 普通に……入れるはずがないじゃないか! どのようなルートであっても、神獣たちを手に入れて使役している時点で犯罪者だ!」

「そういうこと。忘れたの? アウミを違法行為で手にいれた男だって、門を通れるはずがないんだよ」

《 エミリア。メッシュがきたよ 》


地の妖精がメッシュの来訪を告げて裏口へと向かった。


「エミリア、メッシュと約束があったのか?」

「この話し合いに加えようと思っただけ」

「エミリアさん、ありがとうございます。ダイバ、あとでエミリアさんと話し合うといっていたでしょう? 俺も報告したい情報があったから」

「メッシュ、情報が複数あるって聞いてたけど」

「ええ、話す順番は一任していただけますか?」

「ああ、それでいい。メッシュ、魔導具全部止めてあるか?」

「はい。エミリアさん、結界をお願いします」


メッシュの言葉にワクワクしながら待っていた地の妖精たちが「はーい」と手を上げていく。


《 待ってましたー 》

《 結界最大強化〜 》

《 するの〜 》

《しま〜す 》

「じゃあ、ちぃちゃん」

《 はーい。じゃあ、みんな手を繋いでー 》

《 はーい 》


妖精たちが手を繋いで五段の輪っかを作る。そして目を閉じると全身を金色に輝かせた。妖力チカラを溜めているのだ。


《 けっかーい 》


地の妖精がそう合図すると、妖精たちの妖力チカラが解放されて天を衝く。


《 あっ…… 》

「や〜り〜す〜ぎ〜」

「張り切りすぎたな」

「……これはこれで成功ともいえますね」


店を囲む結界を張るだけが、ダンジョン都市シティの外まで覆う結界を張っていた。ダンジョン都市シティは入り口から内は空間魔法で出来ている。その結界が入り口の外に漏れ、キマイラたちの岩山を覆い、『魔物よけが置かれた境界線』まで届いた。

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