第344話
「毎回じゃなくても、コバルトが混じることでその爆発の威力が何倍にも膨れあがる。もし、圧縮によって何千度って高温まで上げまくった水をコバルトで包み込み、外側から重力魔法でさらに圧縮しまくったものがあって……それに小さな穴を開けたら?」
「それこそ被害拡大、か」
「追加でコバルトが変化したら、放射能を含んだ『コバルト60』ができてしまう。そうしたら、一瞬で世界の何割かが消滅する」
「その変化に水素が関係する、というのか。それこそ自然災害に見せかけた事件……」
ダイバが私の説明で眉間に皺を寄せる。
「エミリア、お前はその可能性に辿り着いたというのか。追い詰められた信者たちが口封じのために町を壊滅させると……」
「…………ありえない?」
「いや、ありえる。実際、あの収納庫の中身を信者たちに見せたが、やはりこの二つを探していたようだ。……そうか、あのときは深く考えなかったが、連中の張り詰めた表情は壊滅させるつもりだった覚悟の顔か」
「あそこで危険物として一つもらったよね、女神像」
「ああ、それがどうした?」
「あれがすでに爆弾となっていて、穴を開けるか重力魔法で圧縮させれば爆発する仕組みになっていた。といったら?」
「は、あぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
事実を告げただけなのに、それに驚いたダイバが素っ頓狂な声を張り上げた。思わず耳を塞いだが、ダイバの声はその程度では防げない。
「ダイバ、うるさい」
「黙れ、エミリア! ……ってことは、連中が探していたのはその女神像か。エミリア、その女神像はいまどうなって……って。おい、エミリア。両手で口を塞いで何してるんだ」
「ダイバ……「黙れ」いった……」
「え? あ……あああ! 悪い! そんなつもりでいったんじゃない……」
「ダイバ……「黙れ」って……」
「うわぁぁぁ! ごめん! 悪かった!」
「ダイバが……」
「ごめん! ほんっとーにごめん! 悪かった! これ、この通り!」
そういってローテーブルに額を押しつけて謝罪するダイバ。その頭の上に体重をかけて「ダイバが〜黙れって〜いった〜」っと低音で耳元で囁くと小さく身体を振るわせた。どこかから「ひゅ〜どろろ〜」という
「エミリア、ガラスの着色方法はコバルトだけか?」
「ううん、酸化銅でも綺麗な青色がでるよ。ほかにも材料を変えれば、赤や緑、黄色のガラスも作れる」
「じゃあ、コバルトのことは公開しなくても大丈夫だな」
「コバルト関係のレシピも公開しないよ」
「ああ、そうしてくれ」
ダイバは真面目な表情をしているが、妖精たちのイタズラを現在進行形で受けている。
《 このくちがー、エミリアにー、黙れといったー 》
そう言って、右のほっぺたを摘む風の妖精。
《 エミリアにー、黙れといったくちはー、どーのくちだーい? 》
左のほっぺたを摘みながらそう脅す地の妖精。
《 エミリアがー、『許す』といってもー 》
そう言って右耳を引っ張る光の妖精。
《 私たちはー、許さなーい 》
左の耳を引っ張って、耳のそばで低い声でいうからすでにホラー状態だ。
「エミリア……コイツらを今だけ黙らせてくれ。お前らも、大事な話をしているんだから、遊びたいならあとにしてくれ」
「みんな、あとでダイバが遊んでくれるらしいから。邪魔してると……ほら、ピピンが鳥籠を持ってきた」
《 キャァァァァ! 》
《 エミリア、あとでダイバと農園で遊んでくるよ。それでいいよね? 》
「いいよ」
「勝手に決めるな」
「だって今日、ダイバはお仕事休みでしょ」
ダイバも同調術で妖精が見えるときは、いつも一方的に受けるイタズラの仕返しとばかりに反撃をする。私と契約していることで、手荒なマネをしても大丈夫だと知ってから、妖精たちをまとめて投げ飛ばしたりと色々やり合っている。妖精たちも喜んでいるからいいんじゃないかな?
「最近、ほかの妖精たちも簡単には消えないとかで、あいつらを構ってやってると一緒に飛ばされに来るぞ」
「今までは強めの風が吹くだけで消えていたからね。遊んでくれる人がいて嬉しいんだよ。でもアラクネが作ってくれる虹色の服を着ていない妖精はダメだよ」
「ああ、わかった」
ダイバも妖精たちも、いい運動になっているようだ。
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