第338話
魅了の女神信仰集団と思しき( 自称 )母親の知り合いという者たちが、入れ替わり立ち替わりで荷物を回収しようとするため、シルキーと母親の荷物をシルキー立ち合いで調べることになった。そのため、鑑定が使えて信用ができる人が同席することになったのだが……
「そこで、なんで、私を、引っ張りだすかな〜?」
「お前は強力な鑑定が使えるだろう?」
「
「その点は気にするな」
「気にする〜」
私の農場にいる妖精たちに農作物の出来を確認しにいった帰りにダイバに捕まって庁舎へ連れてこられた。
「せっかく柚子を収穫したのに〜。柚子シロップを作って柚子茶が飲みたいのに〜。柚子ジャムを作りたいのに〜」
「だったら、早く片付けるんだな」
「このまま帰すという手は」
「ないなー」
「私の報酬は?」
「新しいダンジョンが生まれたらしい。今、ダンジョン管理部が魔導具の設置で入っている。そのダンジョン踏破の冒険者第一号にしてやろう」
魔導具の設置で入る管理部のパーティは、魔物よけの魔導具を起動させて行動するため、戦闘をほぼ回避できる。大抵は勝利しないと先に進めないボス戦くらいなものだ。そのため、ダンジョンで一番強い魔物がボスに据えられるか、騰蛇が作ったボスが配置されるため、すぐにダンジョンは開放される。
ただし、マッピングに時間がかかるため、早くて半年後に入られればいい方だ。
「そうそう。シルキーがエミリアに謝罪の意味も込めてレアメタルを贈りたいらしい」
「レアメタル?」
「ああ、シルキーの話では『
「どんなもの?」
「品名か? たしか『コバルト』と言ったぞ」
…………目的はそれだ‼︎
私が叫びかけて慌てて両手で口を押さえたのを見たダイバが、驚きの表情で固まった。しかし、ゆっくり息を吐くと私と自分の周りに結界石を投げて結界を張ってから「ここで説明できることか?」と聞いてきた。今いる場所は会議室で、シルキーと情報部の職員たちを待っている状態だ。ここは鍵をかければ結界が張られて盗撮や盗聴、録音の魔導具は使えない。それでも鍵をかけていないため、誰かが覗いている可能性もある。それで私とダイバを読唇術を使って会話を読まれても困る。
「今はダメ……。簡単には聞かせられない」
口を押さえて会話が読まれないようにしている私にダイバも気付いて、手で自分の口を隠した。
「じゃあ、あとで俺にだけ説明してくれ。その情報を誰に伝えるかは俺が決める」
「先にいっておく。その鉱石、私にちょうだい。絶対に悪用しない。約束する。あと、大陸に埋まっているものは地の妖精たちに回収してもらう。誰かが持っているならそれを奪う」
「……そんなにヤバいものか?」
「使い方を間違えれば世界が滅ぶ」
「そんなものをエミリアに渡して……あ、悪用するとは思っていないから安心しろ。ただ、それを渡しても使い道はあるのか?」
「大丈夫、正しい使い道はある。ただ、そのレシピは公開しない。そして私が死ぬまでに絶対使い切る」
「わかった。俺はエミリアを信じているから安心しろ」
そう言ったダイバに頭を撫でられて、私は震えていたことにやっと気づいた。
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