第309話
「初日は労働が免除される。その代わり、明日から労働者として働いてもらうから、今日はしっかり休みなさい。小屋の中の材料は自由に使っていい。ただし、自分たちで作るように。そしてここから出ることは禁止。料理を作るのが面倒だからといって食堂の料理を食べるのは自由、でも料理代金は借金として追加される」
「僕たちは自分たちで作ります」
真っ先にそう宣言したのは、ウルクレア国出身の二人。ゼオンとヤンシスの借金は共に六百万ジル、白金貨六枚だ。順調に借金を返していけば三年、遅くても四年目には自由になれるだろう。
「僕たちは……すみません、食堂の食事をお願いします」
バラクビル国から来た四人兄妹は、一番上が十歳のセウル。アリアスが八歳でキルヒが七歳、最年少が唯一の女の子だけどアリシアの年齢は五歳。まだ大人の庇護を受けても許される年齢だから、料理ができなくてもおかしくはない。
「そうなると七年から八年ってところかな? セウル、キミは八千万ジル、白大金貨八枚だから二十年はかかるよ?」
「はい、構いません」
「聞くけど、奴隷から解放されたらどうするの?」
そう聞いたら、ウルクレア組とバラクビル組は各々で顔を見合わせる。
「ゼオンとヤンシスは、ルーバーたちの店で下働きでもする気?」
「……できれば」
「この
「そんな……」
「何とかなりませんか」
二人はルーバーに訴えるが、ルーバーはミリィさんに目を向けるだけで何もいわない。
「誰に何をいってるの? あそこはミリィさん
私の言葉にルーバーもゼオンとヤンシスと共に驚いた。
「これが巨人族の十四歳の身長? 人間の十四歳の身長と変わらないんだけど。ってことは人間の血が混じってる……」
「ウソだ!」
「その通りです」
ヤンシスの言葉をゼオンが訂正した。ヤンシスがゼオンを睨むものの、彼に冷たい視線を返されると唇を噛んで俯いた。
「僕たちも、いえ、村のほとんどが過去に人の血が混じっています。本当の巨人族なんて、すでに魔物の
「うーん……。この地に少しは残ってるよ、純血の
「ホントですか⁉︎」
「そう。だから、キミたちの身長があわないことに気付いた。十三歳の少年で、すでに二メートル近かったから」
八歳の女の子に身長を抜かれてた、とはいわない。……悔しいから。
ちなみに『ギガンテス』という呼び名は複数形。個人が『ギガース』。それは巨人族でも魔物でも同じ。というのも、魔物が人と同じ知識と秩序を持ったのが巨人。いわば、魔人や獣人と同じ立ち位置なのだ。
「竜人も忘れるなよ」
……他にも
「だから、竜人も忘れるなって!」
…………だそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。