第292話
《 エミリア、今日も奴隷市にいくー? 》
今日は奴隷市二日目。昨日のうちに、奴隷市で渡されるリストから、目ぼしい奴隷はチェック済み。今年の都長には、奴隷市のリストと農村で働いてもらう候補を鑑定で確認した内容を報告済み。
最終日までは特に代わり映えはしない。一応、最終日前日に追加出品される奴隷を確認しにいくつもりだ。そして、奴隷契約があるため、最終日に奴隷を買うのは都長か代理人たちだ。
「何かしたいことでもあるの?」
《 うーん…… 》
《 起きるかもしれないってところかな 》
《 だからエミリアには行ってほしくないの 》
「…………何が起きるというの?」
私の言葉に妖精たちは顔を合わせる。こういうときは本当にヤバいということはわかっている。
《 エミリア、お願い 》
《 ダイバたちに同調術を使って 》
「……
ふたたびみんなが顔を合わせる。私に言えない理由はなんだ?
「奴隷解放軍に関してだったら、別に私に言っても問題ないよね。じゃあ、いえない理由はなんだ?」
《 えっと…… 》
妖精たちは俯いたり顔を背けて私を見ようとしない。ピピンやリリン、白虎の様子から、妖精たちが何を思ってそういう態度をとっているのかを知っているようだ。
ちょっとさみしい……。そう思ったら、ピピンとリリンが左右の肩に乗って頭を撫でてきた。
《 ……うん、白虎たちのいう通りだよね 》
風の妖精が白虎に頷いて何か言っている。
《 そうだね。今回の場合、エミリアは知った方が大人しくいてくれるよね 》
《 エミリア。外周部に『死隊』がいる 》
「死隊って……アレのこと?」
《 うん……。エミリアが嫌いなモノ 》
《 正確には死隊を操る人間たち 》
《 死隊はすでに一隊分が消滅したよ。今いるのは、そのときに消滅した隊をまとめてた人間たち 》
《 たぶん『奴隷を不当に扱って、殺して使役するため』だと思う 》
《 ただ、解放軍がどう動くかわからない。だからダイバたちに動いてもらいたいんだ 》
《 解放軍も捕まえるなら手伝うよ 》
「そっか。そういう理由ならダイバたちに同調術使ってもいいよ」
以前、私が死隊を嫌がっていたから、事情を話したら怖がると思ったのだろう。そう思っていたら、風の妖精が頭を撫でてきた。
《 エミリア、ゴメンね。嫌なことだから、聞かせたくなかったんだ 》
「ううん、大丈夫。みんなは私を守ろうと思ってくれただけだよね」
《 でも、白虎が『理由を知らないとエミリアは怖がるよ』って言ったんだ 》
白虎が私に身体を擦り寄せる。優しい白虎だから、私の気持ちに気付いたのだろう。ピピンやリリンも私の気持ちをわかってくれる。妖精たちも、私のことを最優先に考えてくれる……空回りするときもあるけど。
「みんな、ありがとう」
今は『一人じゃない』と言えるようになった。ダイバたちもいる。
「いくらでも頼っていい」
そう言ってくれる人たちが私の周りにいる。それってシアワセなんだと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。