第266話
彼女も『息子の成れの果て』をミスリアから見せられて、ようやく他国で何をしてきたのかを知った。そして、後悔からずっと泣き続けていた。
彼女は娘に
「娘に店を譲って。それがダメなら店長にして」
娘を連れて店まできた彼女は、何しにきたのか私服守備隊に聞かれてそう言って、初めて母親の魂胆を知った娘に全身全霊をこめた握りこぶしで殴られた。
この
「私たちが国を追われた原因は
「バカなことを言わないで! お母さん、私がここに今こうして立っていられるのは、
そして、護衛の冒険者が敵わなかったアントの集団に、一人でいくつもの魔法を使って全滅させてくれた、と話した。さらに見張りだったメクジャから「
「お母さん、兄さんはこの
「それでも、
「お母さん、それも勘違いよ。お母さんは私が逃げ出さないための人質。
ミスリアたちが店の前でケンカしていたから、私たちも二階でその様子を見ていた。結局、ミスリア
息子が魔物化していく姿を見てショックだったのだろう。その日から毎日泣き暮らしていた。王都に娘と共に向かい、贖罪のために神殿併設の孤児院ができたときに下働きとして孤児の世話を始めた。
「兄の生命と引き換えに救われたことまでは気付いていません」
ミスリアはそう言っていたが、たぶん気付いている。孤児院で働くのを贖罪のためと言ったのだから。
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