第263話


「さあて。キミタチは、一体なにをしたのかなあ?」

「「「……」」」


両手を腰にあてて、目の前で正座する少年たちを眺める。俯いている彼らはこれからダンジョン前の広場で公開説教だ。


「「「…………」」」

「黙ってたらわからないよ~」

「「「………………」」」

バッチーンッ‼︎


リリンの触手が広場の地面をえぐると、十五人の少年たちは小さな悲鳴をあげて仲間同士で抱きしめ合う。


「さあ、キミタチは~」

「何をしたのかわからんか‼︎」

「「「すみませんでした!!!」」」

「謝って済む問題じゃねえ!!!」


私では甘いと考えたのか、ダイバが私の言葉を遮って怒鳴り出した。

今回ばかりはアゴールも止めない。っていうより、ダイバが怒鳴らなければアゴールが激怒する。私は、一瞬利き足を後ろに下げたのを見た。ダイバがでなければ、確実に数人が蹴っ飛ばされていただろう。

そう思っていたが、その考えが甘かった。

シュッという音がして触手が彼らを二分して絡めると、ブンブンと上下左右に振り回しだした。


「あー……」

「けっこう怒ってるな……」

「一応、リリンは『植物に特化している』から」

「……仲間を傷つけられたようなものだからな」

「「「ズビバベーンすみません」」」


泣きじゃくる連中を無視して、今後どうするか相談を始める。

その前にピピンに伝えておこうか。


「ピピン、リリンが殺す前に止めてね」


ピピンは上下に揺れて承諾してくれる。そしてリリンは……触手を振るスピードをあげた。



「ダンジョンの方はどうなってる?」

「地の妖精を中心に修復を開始してくれている」


少年たちはいくつものダンジョンを破壊していた。私が見つけた数々の珍しいお宝に興味を持ち、一獲千金を狙ったのだ。

それも百七十番ダンジョンは、今までもたくさんの人たちが入ってきたのだ。


「どこかにある隠しルートを見つけたんだろう」


そう噂されているのは知っていた。都長やダンジョン管理部に守備隊と警備隊同席で情報部の取材を受けた。


「どうやって隠しルートに入ったんですか?」

「……私どころか妖精たちも気付いていなかった。ただ、魔物が一体も出ないからおかしいと思ってね。地の妖精が調べにいったら『本来のルートではない』とわかったの」

「じゃあ、おかしなところはなかった?」

「うん。違うのは魔物が出ないことくらい。普通にアイテムはあったし。普通に灯りもついていた」

「え? 灯りって魔石の、ですか?」

「うん、そう。だから気付かなかった」


私の言葉にダンジョン管理部を代表してきていたシエラが驚きの声をあげた。それに肯定すると全員が驚きの表情のままで顔を見合わせる。


「妖精でも気付かなかったって不思議な話ですね」

「何がきっかけで別のルートに入ったのでしょう」

「そういえば、エミリア。ボス戦はあったのか?」

「ううん、ない。で、奥の部屋に転移石があったから触ったら、正規ルートの入り口に戻ってた」


いつどうやって入ったかわからない。妖精たちも気付いていなかった。

それが、少年たちに『だったら俺たちが解明してやろう』という使命感を生み出させたようだ。

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