第255話
「あ〜! ひっさしぶりのダンジョ〜ン♪」
ダンジョンに入ってまず最初にやったのが、今の思いを声を出して叫ぶことだった。
《 わーい! 久しぶりの鉱石ダンジョンだねー 》
《 魔鉱石あるかなー? 》
《 エミリア。そこの岩の中に無属性の魔石があるよ 》
《 こっちは
「よーし、『収納』!」
右手を伸ばして、便利なカバンの収納機能を存分に使って周囲に隠れた素材を一気に収納する。収納した素材はアミュレットの鑑定機能で細かく分類されて、リストアップされた状態でステータスに表示される。
《 ねえ、何か珍しいものでも手にはいったー? 》
「珍しい……というのかな? この世界に不釣り合いな『へんなもの』があるよ」
《 なに? 》
《 へんなもの? 》
「うん。出してみるよ」
そう言って、右手を前に伸ばしてリストにあるアイテム名に触れる。
《 う、わぁ…… 》
《 なんだ、これ…… 》
妖精たちがポカーンと口を開けてソレを見上げる。目の前に現れたのは、高さ六メートルの……坐像。
「エミリア……。これは『エミリアの世界のもの』、なんだね?」
私の表情を読み取った風の妖精に聞かれて頷く。
「……阿弥陀如来坐像。西方にあるという極楽浄土に住む仏様を模した像。東方には薬師瑠璃光如来。浄瑠璃浄土に住む健康の仏様」
有名なのは鎌倉の大仏。極楽浄土は西にあるというのに、『なぜ日本列島の東にあるのか』という話が出たことがあったな。
《 ……リア。もう、エミリアったら! 》
「……ん、なに?」
ペチペチという頬の刺激とともに、坐像に向けていた意識が戻る。
《 この『仏様』っていうの? これをどうするのか、って聞いてるの 》
《 埋もれていたし、エミリアが収納できたってことは持ち帰っていいんだと思うけど…… 》
《 エミリア。エミリアの世界ではこれはどうしていたの? 地面に埋めてた? 》
「んー? たしかにお城の下に守ってもらうための護法として埋めていたって聞いたことはあるよ。でも、その場合は護法善神と呼ばれる四天王や十二神将たちが四方に埋められたそうだから……」
《 じゃあ、救ってあげよう 》
《 そうだね。ここに置き去りにされたら可哀想だもんね 》
妖精たちの言葉に笑みが漏れる。救いを求められる仏様が救いを求める立場に立っている。
……それがなんだか微笑ましい。
妖精たちにとってみれば深い意味はないのだろう。だいたい、この世界の信仰は『神様』であって、仏様を知らないのだから。
《 エミリア。この子、カバンにしまってあげて 》
《 連れて帰って、綺麗にしてあげるよ 》
「みんな、この阿弥陀様は神殿に安置されている神様の像と同じだよ」
《 えー! 》
私の言葉にみんなから驚きの声があがる。……驚きの方向性が違うが。
《 なんでこんなダンジョンにいるの! 》
《 それも地面の中に! 》
《 だいたい、なんの理由があって『エミリアの世界から
《 それも盗った仏様? それを隠すように地面に埋めて隠すなんて! 》
《 こんのバチ当たりがぁー‼︎ 》
…………この子たち、前世は日本人だったのかしら?
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