第246話
その日、コルスターナ国内では
荒野の広がる大陸では珍しい、湿地帯の多いこの国では湿気を帯びた風が吹くが、温度を含んだ風は吹くことはない。風と共に漂う不吉な気配を誰もが感じとっていた。
…………そして、それは突然起きた。
昼になる一時間前、王城を覆うように結界が内側から張られたのだ。どんな魔法を使っても、何人が束になっても、内側から張られた結界は一切の揺らぎも起こさなかった。
「結界石がどこかにあるはずだ!」
王城内外で人々が騒いで、結界石を結界周辺で探すものの見つけることができない。いや、たとえ結界石が見つかっても魔力を通した者が一つでも外さなければ結界石に触れることはできない。破壊できないのだ。
最初は王城外にいた人たちも必死に結界石を探していたが、ある姿を目の当たりにしてから探すのをやめてしまった。
「あ……あんなものを王城から出すわけにはいかない」
異形の魔物が王城内で暴れているのだ。中で逃げ回る人々は結界に阻まれて王城から出られない。王城の外で戦々恐々とその姿を見ていた人々は「なぜ?」という疑問を口にした。逃げ回っているのは、自分たちに対して圧力と増税をかけて苦しめている王族や貴族たちだ。王城で働く人々の中で他者に不当な扱いを繰り返した者は王城内に取り残され、逆に王族や貴族の立場でも不遇な立場だった人は王城の外に出されていた。
「この結界は……我々を守るためのものだ。だったらこの結界の外にもう一つ結界を張ろう」
ただ二重結界には問題がある。二重結界を張ると一重目の結界内の様子がわからないことだ。
「しかし、それが唯一我々ができることだ」
「ああ。我々王都守備隊は民を、『この国の宝』を守ることが最優先だ。……王族や貴族たちは騎士団がお守りするだろう」
騎士団と守備隊は仲が悪い。騎士団は貴族の子弟で結成されているからだ。彼らは常に『貴族以下は虫ケラ』と嘲笑う。そのため彼らは民を虐げる。
「騎士団が聞いて呆れる」
そのために作られた守備隊。
彼らは結界の中から睨み、大きく口を開いている姿は見えているが、中から張られた結界は外から解除できない。
正直にいうと、二重結界を張ることで、彼らの存在が気にならなくなればいい。
「それにしても。今日は王城で何かあったのか?」
「いや。聞いてないな」
「いつの間に集まったんだ?」
王城でパーティーが行われる場合、連なった馬車が道を塞ぎ、市民の暮らしの邪魔をする。王城の近くにも関わらず、貴族街から馬車で向かうには正門から入る必要がある。そしていちいち中にどこの貴族が到着したかを伝えてから案内していく。そのため、馬車一台に十分はかける。
最後の馬車が王城に入るまで、優に五時間はかかる。帰りはさらに時間がかかり、王城の正門が閉じるまで八時間は必要だ。唯一、登城と違うのは直帰していくところだろう。その間、守備隊は市民の安全のために駆り出されている。
今回はそんなこともなかったのだ。
「何が起きているかはわからない。だから、我々は王都の人々を守るためにできることをしよう」
それを合言葉に、守備隊は王城の混乱を二重結界を張ることで見捨てた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。