第240話


《 ところで、エミリア。この子たちどうするの? 》


私や妖精たちがいる公開檻の中には三体の神獣たち。気がついたベヒモスはジズとレヴィアタンから詳しい説明を受けたらしい。高さ一メートルほどの小さな象になって、害意がないことを意思表示して見せてくれた。妖精たちは三体と遊ぶほど仲良くなった。彼らはすでにキマイラと共にこの地を守る守護者となることを望んでいた。都長であるルレインはすでに了承している。

問題なのは国王たちだ。神獣たちの所有権を求めてきたのだ。


「ヘェ〜。『神獣の所有権』だってー? 神獣ってなんじゃないの? 王族って神だっけ? 違うなら『神の名を騙るバカ』とか『神の威をるクズ』とか。まあ、罰当たりなのは確実だよね〜」


私の言葉にハッとした表情になり、それまでの大騒ぎが一瞬で引いた。まだ騒ごうとした者は、周りから口を塞がれた。彼らは移動檻の中にいる。公開檻と違い、移動する普通の檻だ。そのため檻の外の声は丸聞こえの上、檻の中の会話は外に筒抜けのため、自分たちが見世物となってる羞恥を持つこととなる。ただし、本人たちに羞恥心がなければ気にならないらしい。この世界の檻は何人、何十人、何百人増えても、空間魔法で程々の広さが保たれる。外から見るとわちゃわちゃ、ぐちゃぐちゃで混沌としているが……


「な〜んか、神獣たちに『頭からパックン』されたい人がいっぱいいるんだ」

「そうですね。自分たちを神と騙るとは……」

「どの子にする? ベヒモス? ジズ? レヴィアタン? キマイラもいるよ。あの子たちは神獣だからね。自分たちは神だと偉そうに言って、そのまま命令してみな。アンタらが神だと認められれば従ってくれるし、神ではないと見做されたら……ねえ」

「痛い思いをするだけならまだマシ。頭から丸呑みされればまあまあ。甚振いたぶって苦しめて、弱らせてから食われるでしょう」

「散々甚振って、『食う価値なし』と判断されて、肉食の魔物の巣にでも投げ込まれるんじゃない? そして多数の魔物たちに……」


ここで言葉を区切って、檻の中を見て意味深な様子で


「簡単には死ねませんよ、『神の罰』なんですから。女性の皆さんはゴブリンたちの巣に投げ込まれないといいですね〜。男性も……『胎内変化』で女体化されて妊娠もするそうですね。楽しそうだな〜」


と笑ってあげたら、女性たちから悲鳴が。男性たちは青ざめて失神する人までいた。


「あれー? 神の罰が始まったー?」

「そうですね。神の罰は、いつ如何いかなるときでも与えられますから」

「男娼館を作りましょうか?」

「高級男娼館? ただし、高級なのは男娼の身分であって、外周部の安い稼ぎでも入ることが可能な木賃宿でいいんじゃない?」


木賃宿と聞いてさらに悲鳴があがった。

木賃宿は食事も何もでない。燃料代がイコール宿泊料で、宿泊者は大部屋で雑魚寝する。寝具は持ち込み。そんな最安の宿のことだ。だからこそ、冬は宿屋が閉ざされる。空調もない、ただ寝る場所を提供するだけのため、真夏でも死者がでる。だ。真冬より温度差が激しいため、凍死しやすいのだ。冬場の死者は一酸化炭素中毒。もし宿屋で暖をとろうとして一酸化炭素中毒を起こしたら、運が良ければ一室。運が悪ければ宿の宿泊者全員が『目覚めぬ眠り』につく。

それをけるために、冬場は宿が閉められる。冬場でも営業を許されるのが娼館や男娼館だ。理由は……『大人の事情』らしい。

そんな木賃宿の男娼館というのは……部屋住みの男娼がその部屋の宿泊者全員を相手にするということ。部屋住みの男娼も複数人いるが、部屋の宿泊者の方が断然多い。男娼たちにとって『一番送られたくない場所』だといわれている。

どんな内容であれ『神の罰』を受けた男性には、外見そのままで女性と同様に妊娠・出産できるらしい。元々、男娼館はそんな罰を受けた人たちの保護の場所だった。今は孤児の保護の場だったり、性犯罪者の償いの場でもある。

国王たちには新たな『男娼館の華』となってもらおう。

大丈夫。まともな子たちがいる。その子たちが『明るい未来』を作ってくれるだろう。

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