第201話
今日はフーリさんたちの食堂『バラクル』にて、任期お疲れさま会が行われている。ダイバとアゴールの二人が都長と都長補佐の引き継ぎを済ませて解放されたからだ。
私も誘われたが、前日までダンジョンに入っていたため辞退した。今日も午前中はダラダラと二度寝・三度寝をして、朝食後はテント内の
「そういえば、『お疲れだったね会』は夕方からだったよね」
ダイバたちが仕事を終えた夕方から始めるとは聞いていた。しかし、妖精たちに止められて参加をしなかったのだ。
「そういえば、なんで『でちゃダメ』って言ってたの?」
《 次の都長と都長補佐も参加するからよ 》
《 あいつら、エミリアも参加するのか聞いていたんだ 》
アゴールの護衛を妖精たちは続けている。今日も交代で出ている。庁舎勤務も最終ということで、悪意を持った人が行動をしないとは限らなかった。だから、私は白虎たちとゴロゴロして過ごしていた。そこで妖精たちが新しい都長たちの会話を聞いてきたらしい。
《 だからエミリアには断ってもらったんだ 》
《 アゴールが『エミリアは来ない』って言ったら、どうしても挨拶がしたいって粘っていたんだ 》
「えー。今度のはどこの部署だっけ?」
《 警備部第一班 》
《 ダイバが怒ってたから話は流れたけど、エミリアにはダイバたちのときみたいに助けてほしいって頼もうとしてたんだよ 》
「えー。それは困る。自由にダンジョンへ入れないじゃん」
だいたい、
《 監査部とか、よくわかってないから教えてほしい、とか言ってたよ 》
「あの制度を作ったのはダイバとアゴール。聞きたいなら二人に聞けばいい」
《 違うよ、エミリア。今回は単純に『お近付きになりたい』って欲だよ 》
《 ついでに言いふらすんだよ。「個人的に仲良くなった」って 》
「……なんだ、それ? 警備部第一班って、一度も関わったことがない班だよね」
《 だからだよ。エミリアと話して握手でもすれば『お友達』になったつもりになれるんだ 》
「…………キモい。うっわー、鳥肌たってるよ〜」
腕をさすると、みんなも《 大丈夫だよ 》と言いながら私の腕をさすってくれる。
警備部第一班は主に北部地区……職人が多く住む地域の管轄で、商業地区に住む私はほとんど関わりがない場所だ。そして職人ギルドだけでなく、商人ギルドもここにある。
私にしてみれば北部地区とは関わりたくもない場所だ。そこに関わっている警備部第一班も同様だ。以前、両ギルドマスターが結託した上、他の町のギルドマスターたちから賄賂をもらっただけでなく、一緒になって私相手に騒ぎを起こした。その時、彼らの護衛をしていたのが警備部第一班なのだ。あのとき、守備隊は護衛を拒否した。止めても聞かないマスターたちに「お前たちは何を考えているんだ!」と怒鳴った守備隊の隊長にマスターたちは「北部地区に警備部第一班だけで十分だ!」と言い返してしまった。北部地区は以降、守備隊の管理エリア外に指定されている。そして、警備部第一班が独占管理をしている。
「情報部のニュースでは、都長や都長補佐が冒険者個人に関わるのは禁止されているらしいよ。ダイバとアゴールは『友だち』だから私と関わるのは許されていたけど、今度の都長たちは『越権行為』で都長だけでなく隊長もクビになるよ」
《 もし、そうならなくても私たちが罰を与えるよ 》
《 エミリアは気にしなくていいからね 》
……別の意味で心配になってきた。
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