第165話
《 エミリア。アウミだけど、試作品を持たせて 》
ダイバにアウミたちを預けて店から送り出そうとしたところで、扉が封じられてしまった。
「どうしたの?」
《 外に不審者がいる 》
《 たぶん、アウミを探している 》
「ダイバ。外に不審者がいるって」
私の言葉にアウミが二階へ逃げ出そうとした。
「はいはい。ここは
アゴールがアウミを俵のようにお米様抱っこで持ち上げる。肩の上に乗せられても足をバタつかせていたアウミも、解決しないと理解したのか大人しくなった。
「はい、良い子ですね。ではエミリアさん。何か解決策があるんですか?」
「ん? ああ。まだ試作段階で、使えるのは一回、運が良ければ二回なんだけど」
そう言って私が取り出したのは、『認識阻害の指輪』。私という存在を特定して押し寄せる連中の目から、私が見つけにくくするものだ。
それを補うために指輪を作っているのだが、元々阻害系の魔法は長時間使えない。大小さまざまな犯罪に悪用できてしまうからだ。万引きやスリをしていないように誤解させられる。もちろん賞罰を誤魔化すことも可能だ。ただし、魔導具相手には効かない。そのため、城門などで行われる身分証の確認には魔導具が使われている。
「『幻惑の指輪』の方がいいかな? こっちは別人に見せるだけだから」
「そうですね。この子たちなら犯罪に使うとは思えませんが、認識阻害の指輪の存在を知った一部のバカ連中に生命を狙われてしまいます。別人に思わせるだけなら、問題は起きないでしょう」
「あるとすれば、店に『魔導具起動停止』がかかっている場合か」
「でも、ダイバ。たしか、身を守る魔導具は停止しないよ? 私だって、外に出る時は貴族排除の指輪をつけているけど、一度も停止したことないもん」
「エミリアさん。この都市内で起動させた
「…………変だな。都市の機能が停止してるのか? それとも起動が偏っているのか?」
私がアゴールの言葉で首を傾げたのを見て、ダイバも首を傾げる。
「エミリアさん。その指輪は、いつも身につけているんですか?」
「ううん、違う。起動させたまま収納ボックスに入れてる」
「……その場合、ステータスからオンとオフが可能ですよね」
「それをオンにしたまま入って、買い物して、出てくる。いちいち切り替えたりしていない」
私の言葉に、ダイバとアゴールが困惑するように顔を見合わせた。
「一度、調査してみます。それで、幻惑の指輪をお借りできますか?」
「はい。これは三日間しか使えません」
「分かりました。お預かりします」
アゴールが指輪を受け取り、床にすでに下ろされているアウミに渡す。
「お預かりしたものです。なくさないように」
「はい」
アウミが受け取った指輪をステータスから収納し、そのまま所持品からオンにしたようだ。すぐに、アウミとは似ても似つかぬ子供が現れた。子供たち三人は見かけの変わったアウミを中心にはしゃいでいる。
「ちゃんと起動したね。ダイバ、アゴール。三日以内に問題を片付けて。……じゃないと」
途切らせた言葉に二人は顔を縦に振る。言わなくてもわかる。
『妖精たちが、見つけた連中をどうかするよ』
私はその時、気付いていなかった。このことにエリーさんたちがかかわっていて、この都市にエリーさんたちが再び来ることを。
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