第156話


目を覚ますと、真っ先に妖精たちからの『お説教』が始まる。

暗と水の妖精たちには、しがみついて泣かれてしまった。寝ている間に疲れから熱を出しているらしく、2人には心配させてしまっている。ちなみにその時は、ピピンが『氷嚢代わり』になって額の上に乗って冷やしてくれている。


《 いい?エミリア。「今までは出来ていた」じゃないの。わかる?熱を出すってことは、それだけ疲れているのよ 》


《 エミリア。ダンジョン都市ここに来た頃、何日も寝込んでいたでしょ? この大陸に渡った頃は何ヶ月も眠り続けていたって。そのせいで記憶がなくなったんでしょう? ・・・私たちのことを忘れないで。・・・・・・おねがい 》


みんなの悲痛な声。それを聞いていると反省する。・・・するんだけど。


《 また忘れちゃうんでしょ? 》


「・・・・・・ゴメン」


《 忘れても、何度でも言うからね 》


ガウッ!


私がわざと忘れているわけじゃないのは知っているから、みんなは注意してくれている。


《 あ、そうそう。エミリアが寝る前に作っていた癒しの水は冷蔵庫に入れてあるわよ。くらやみが時間停止させてくれているから、あとで収納カバンに入れて 》


「・・・今回、何日寝てた?」


《 今回は短かったわよ 》


《 熱を出したけど3日。少しずつだけど、寝ている期間が短くなってきたわ 》


前回は7日だった。みんなと出会う前は20日近く眠り続けていたこともある。その頃は食べてないから出るものもなかった。

いまは・・・眠り続けていると体内の動きも緩くなるようで、起きたらすぐにトイレへ直行する。


《 でも、回復はゆっくりだから無茶はしないで 》


「ん・・・わかった。・・・もう起きていい?」


私の額に手を伸ばして熱を確認している火の妖精に確認をしてみる。


《 まだ少し熱があるわね 》


「上がりそう?」


《 水分と食事を取れば下がるかも。水とピピンが脱水にならないように注意してくれていたけど、熱が出てたからね。たぶん栄養が足りていないんだと思う 》


「じゃあ、みんなでごはんにしよう?みんなも私にくっついていたから、ろくに食べていないんでしょう?」


いつも付きっ切りで看病してくれているため、妖精たちも衰弱していることが多い。


《 じゃあ、先に準備しているから 》


「ありがとう」


暗の妖精が私の身体を浮かせてトイレ前まで運んでくれた。以前は妖精たちも一緒に中まで入ろうとしたため、ピピンが『教育的指導』をしてくれた。それ以降、トイレの前で待っていてくれる。

トイレ自体は水洗で、レバーを下に下ろせば、汚物は『物質転移専用の転移石』で処理場に転移される。そしてトイレットペーパーもあるしウォシュレットもある。魔法で洗浄も乾燥もできる。


《 ほら、エミリア。手を出して 》


トイレから出ると、水の妖精が手の洗浄をしてくれる。光の妖精はトイレ内を浄化してくれる。

そして、大型犬並みに大きくなった白虎の背に乗せられて食堂まで運ばれていく。揺れないように慎重に歩いて私のイスの横で下ろしてくれた。


「白虎。ありがとう」


ガウ!


イスに座って白虎にお礼を言いながら撫でると嬉しそうに尻尾を左右に振っている。


《 はい、エミリア。ちゃんと癒しの水を飲んで 》


「ありがとう」


コップに入った水を飲んでいると、妖精たちが貯蔵庫から作り置きした料理を出してきた。貯蔵庫には時間停止機能の魔石を追加したため傷むことはない。この機能は元々この世界にあり、料理屋などでは普通に設置されているものだ。


《 はい。今はおにぎりね 》


《 体調が悪くならなかったら、夜は焼うどんにしましょ。揚げ物は明日ね 》


「サラダも貰える?」


《 少しだけね 》


そう言って出された生野菜とワカメの味噌汁。身体に負担が少ないとして、起きた直後はいつも和食。


「じゃあ、いただきましょう」


《 いただきまーす 》


これが私たちにとっての日常。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る