第150話
そう・・・私は目覚めた時、記憶喪失だった。「ココハドコ。ワタシハダレ?」の世界。疲れがピークに達したせいか、思考回路が仕事を放棄し、記憶の引き出しに鍵をかけたまま逃げ出してしまった。
最初の頃はベッドから上半身を起こしてボーッとし、でも『何をするのか』も『何かするのか』も分からず。そのまま横になり眠る。空腹は限度を超えると感じなくなるようだ。眠って動かないからエネルギーを消費しなかったのもあるだろう。
そのうち、私は起きたらテントの中を歩き出した。『何かを探す』のではなく見て回るだけ。まるで夢遊病のように。その途中で、書斎の執務机の上に飾られた『家族写真』を見つけた。
「・・・お兄ちゃん」
そのひと言で、私は家族を全員亡くしたことを漠然と思い出した。私はその場で倒れ、夢の中で家族と過ごした日々を思い出していった。
ある日、目を覚ました時には『テントの中で過ごした記憶』を思い出していた。夢の中で見たテント生活。テントの中では『私ひとり』で誰もいない。料理も調合も錬金も。そのあと少しずつだけど夢の中で思い出していった。
過去の記憶に関わる物に触れると意識をなくしてしまうのだろう。地底湖で意識をなくして倒れたのも、『水の迷宮』を微かに思い出したからだ。それ以降、エリーさんやフィシスさんたちと『鉄壁の
どの記憶も完全ではありません。その時の感情も思い出せていません。まるで、『夢の中の自分を外から見ている』ような。『自分に似た誰か』の記録を見ているような・・・。そんな不思議な気分なのです。
「ただいまー」
《 エミリア! 》
家に帰って二階に上がると、妖精たちが飛びついてきた。
「どうしたの?何か怖いことでもあったの?」
そう聞いても、みんなは首を左右に振って泣きついています。白虎は足元に擦り寄ってるし、ピピンとリリンも両肩に分かれて乗り、顔にスリスリしています。
「・・・もう。何があったというのよ」
そのままの状態で椅子に座ると、白虎が膝に乗ってきて腹部に擦り寄ってきた。
《 帰って来ないと思った・・・ 》
少し落ち着いた地の妖精がポツリと呟いた。
「これ以上続けるなら嫌いになるよ!」
そう言ったら慌てて離れてくれました。以前に怒って机に涙石を置いて結界を張りテントを置いて中に引きこもってしまったのだ。涙石がなければテントに入れない。妖精でも結界石で張られる結界の中に入れないし、テントの中にも入れない。
あの時も『私の記憶』が原因だった。倒れてしまう私を心配してのこと。
《『冒険者』なんか止めて! 》
《 ずっと此処で過ごせばいいじゃない! 》
《 店なんかやらなくてもいい 》
《 お金がなければ『あるところ』から持って来ればいい 》
・・・最後のこの言葉でテントに引きこもり。と言っても数時間。半日も入っていない。
家は結界を張っているため、妖精たちが泣いても騒いでも問題はない。ただ、家に張られる結界は『結界石を砕いて外壁に塗られたもの』で出来ていて、扉の鍵を掛けることで起動する。でも妖精には効かない。
テントから出てきたら妖精たちは床で正座してた。妖精たちにとって『たくさんあるところから
みんなの先輩にあたるピピンとリリンに、『人間の常識』を文字通り叩き込まれていた。触手を伸ばしたピピンが乗っている椅子をバンバン叩いて間違ったら直接叩いて『教育』されていたようだ。
ちなみにピピンは書斎に入り込んでは本を読んで勉強したらしい。リリンはそんなピピンから教わり、今は二人で妖精たちの『指導係』をしている。白虎の方は『人間との距離感』を本能で理解しているようだ。
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