第134話


手続きをして関所ゲートを出てきた冒険者の中に子供たちが入っていた。


「マウリヤ。ユミン。ソマリア」


「あ、エミリア」


「あんたたちも潜っていたの?」


「ああ。一昨日から採取で。エミリアは今からか?」


「そうだけど」


「はい、エミリア。お土産」


そう言ってユミンがカバンから取り出したのは革袋。中身は地底湖で見つかる鉱石が詰まっていた。この子たちは『ついで』『土産』と言って、地底湖で見つかる鉱石を集めて来てくれる。


「8階の地底湖の分まで集まってる」


「ありがとう。封鎖されたから、どうしようか考えていたんだ。今度帰ったら『お礼』をあげるね」


私があげるお礼はお菓子。このダンジョン都市ではお菓子は少ない。砂糖自体が希少で高価なのだ。各地を旅して来た私だから持っている(と思われている)果物などで作る砂糖たっぷりジャム。それを使って作るお菓子は人気だ。


『エア名義』で登録した取り引き店とは『エミリア名義』に変わった今でも使えている。日本の通信販売と同じ仕組みだが購入者が特定されない。・・・それを考えたら『顔が見えない』店頭販売のようなものかもしれない。

今でも新作レシピはテント内で作り『エア名義』で登録しているので居場所は特定されない。商人ギルドと職人ギルドで登録した『エミリア名義』はショップのためだ。もちろん製作はテント内。入浴剤や香水はレシピを公開していないため、レシピを盗み見ようとする『不届き者』は多い。そのため、私の家の周囲には私服守備隊が多く見られる。

コッソリ、でもわざと「冒険者だからテント内で作ってる」と話したら覗きはなくなった。その代わりに冒険者ギルドに私あての『パーティ申請許可書』がドッサリ届いたらしい。しかしパーティ申請一括拒否で登録しているので受付で拒否されて私まで届くことはない。フレンドも拒否設定してるため誰からも申請は届かない。

もし直接接触してきたら『迷惑行為』で厳罰になる。『ダンジョン都市』だからこそ、何処よりも厳しいのだ。その分、法に守られてもいる。



冒険者なら12歳からダンジョンに入れるが、この都市にいる子供のほとんどが孤児だ。親がダンジョン内で魔物に倒されたり怪我や病気で亡くなったりして残された子供たちだ。管理されているダンジョンだからと言って回復薬などの準備不足は自分の責任。そして、管理部が『死にそうだから緊急脱出』ということをしてはくれない。ダンジョンで全滅した場合、関所ゲートと『ダンジョン管理部・本部』に赤ランプがともって知らせてくれる。そうするとダンジョンが封鎖されて、1番から5番のダンジョンの場合は全員が緊急脱出させられる。血の臭いで魔物が凶暴化するからだ。そして、人の血肉を食べて人の味を覚えた魔物はさらに凶暴化して手当たり次第襲いかかる。

・・・そして、子供だけが残される。


ちゃんと子供にもお金を渡し『もしもの時』を伝えている親もいる。そんな子供は冒険者ギルドにそのことを伝えて『通行証』を受け取り、乗合馬車に乗せられて指定された町へと向かっていく。冒険者の場合、子供を遺してしまった時に冒険者孤児専用の孤児院がある。そこで冒険者としての知識を身に付け、パーティを組んで13歳から15歳で卒院する。半数の子は親と同じ冒険者の道を選んで生きていく。商人や職人の道を進む子もいる。そんな子もこの孤児院では教えていく。

残り半分が、此処の孤児のように『親の死後何処へ向かうか』などを聞かされていない。または聞かされていても、親のいない間に渡されたお金を使ってしまい、旅費がなくなって行けなくなった子もいる。

そのため荷物持ちとして12歳未満から入っている子が多い。12歳になってから冒険者に登録して素材集めなどの依頼を受ける。それで生活をしているのだ。

マウリヤたちも12歳になって冒険者登録した子たちだ。ちなみに他の子たちも、私へ『土産』を持ってくる。お金を支払うと『依頼』になってしまうため、お菓子類を『お礼』にしている。

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