第132話


「エミリア」


「おはよう。エミリア」


「今日からダンジョンだろ?」


扉を開けると、店舗の前にある三段の階段に座ってたむろしている男性たちが気軽に話しかけてくる。彼らは開店するときは場所を移動してくれる。町のガードマンのようなもので、破落戸ならずものに店が荒らされたりしないように守ってくれている。

彼らは町の私服守備隊なのだ。守備隊の厳しい規律に縛られるのは嫌だが都市は守りたい、という『元・冒険者』が自主的にやっているらしい。今では『団』を作り、守備隊と口頭報告をし合うことで情報が共有されるようになり、さらに安全な都市づくりのいしずえとなっている。

守備隊を『消防派出所』に例えるなら、私服守備隊は『消防団』と言えるだろう。そう。これは私からの提案だ。



「おはよう。みんな。何時いつも通り結界を張ってあるけど。留守の間、お願いね」


「任しとけ」


「気を付けて行ってこいよ」


「うん。ありがとう。行ってきまーす」


手を振って関所ゲートに向かって行く。その途中でもいろんな人たちから声をかけられる。


「やあ、エミリアちゃん」


「おはようエミリア。今からダンジョンか?」


「おはよう。そうだよ。素材を採取とりにね」


「じゃあ、ちょっと待ってろ。メシを作るから持ってけ」


「ありがとう。じゃあ2食分よろしくー」


そう言って鉄板焼きの親父さんに笑うと、女将さんが奥から出てきた。この店はオーナーが女将さんで、親父さんが雇われ店長兼料理人。冒険者の時にこの都市に来て、そのまま居ついてしまったらしい。今でも冒険者ギルドに籍を置いていて、日帰りでダンジョンに入って食材をってくるそうだ。息が合って行動を共にしているが夫婦ではないらしい。


「エミリアちゃん。朝ごはん食べてないの?」


「食べたけど起きたのが早かったからね。早昼はやひる遅昼おそひるで夜までに2食は食べる」


もうすぐ5時。ダンジョンの関所ゲートが開く時間に合わせて入りたいから2時間前に起きて準備していた。朝食もその時間にとっている。


「待ってる間に食っとけ」


そう言われて出されたのは、隣の立ち食いうどん屋名物の素うどん。もちろんうどん屋のご好意おごりだ。


「いっただきー」


「おい。俺んちの前で隣のメシを食うな」


鉄板焼きの親父さんに苦笑されつつ、うどんを完食する。


「ごっそさーん」


「おら。出来たぞ」


「ありがとう。じゃあ行ってきまーす」


「おう。気をつけてなー」


「行ってらっしゃい」


受け取った鉄板焼きを収納カバンに入れて手を振って離れた。

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