第136話
あの時は、ダンジョンで3日過ごして出てきたら、周囲の環境が変わっていた。
孤児院が出来て、孤児が通りで座っている姿がなくなった。孤児が荷物持ちの仕事を求めて
元々、荷物持ちが必要な冒険者は
孤児たちの生活が大きく規制されて罰則が重くなっても、彼らとの接触を最低限にしたくて、彼らが来る前にダンジョンに入ろうとする冒険者は多い。
そして、出てきた時にも『不用品を貰おう』という孤児が多かった。中には引ったくりをする子までいる。特に私は『顔見知り』ということで「ちょうだい!」がしつこかった。・・・吹っ飛ばしたが。
「顔見知りだから盗んでもいいと思ってるのか!」
警備隊が私のカバンに手を伸ばして奪おうとした孤児たちを取り押さえてそう怒鳴った。
「顔見知りなんだから『可哀想なオレたちに分け与える』のが当たり前じゃないか!」
「顔見知り程度の分際で?」
私の冷たく低い声に、自己主張していた孤児たちは黙った。驚いたのだろう。しかし、疲れて帰ってきて、
「『分け与える』?アンタらが私に何かしてくれたか?毎回、入る時にしつこく追い回して「ダンジョンに連れて行け」と喚き、帰ったら帰ったで「とってきた荷物をよこせ」。そんな迷惑な集団強盗に誰が
私の言葉に小さい子が泣き出した。中には「ひどいよ」と言い出す子もいたが、「泣けば済むと思ってるの?泥棒。アンタらは集団で徒党を組んで襲いかかった強盗だ。「ひどい」?それを言っていいのは被害者のこっちだ!」と言ったら誰も何も言わなくなった。
「犯罪者の分際でナニサマ?捕まって『謝罪して許してもらおう』って甘っちょろい考えならいざ知らず。開き直って自分たちの犯罪を正当化?それで罪を私に
私の最後の言葉が低く本気だと分かったのだろう。その場にいた全員が青褪めた。
滅ぼすのは私ではない。逆に私は『止める側』なのだ。・・・止める気がなくなれば、都市を滅ぼすだろう。
この時、私の周囲にいた孤児18人は警備隊が連れて行った。彼らの迷惑行為が孤児の立場をさらに悪くし、罰則が強化された。『都市の滅亡』がギリギリまで迫っていたのだから。
18人は以降見ていない。私が警備隊から受けた報告では「罰として都市の『清掃部』に加えられて北西部を担当することになった」というものだ。北西部は汚水処理施設と廃棄物処理施設がある。「いらないものをクレクレ」と言っていたため、『いらないもの』が集まる場所に
「仕事も
それは『別の意味』で泣いたんだろうね。
・・・常識ある人はそのような場所を『監獄』と呼びます。
「で、どうするかね」
「・・・ん?もう終わった?」
「ああ。待たせて悪かったな」
強制的にダンジョンから出された冒険者は、2番から5番までのダンジョンに潜りに行ったり、ダンジョンエリアから出て都市に戻ったり。
それが落ち着くまで待機して待っていた。まあ、色々と在庫を確認して入るダンジョンを選んでいたともいうが。
「そうだなー。確認してたんだけど、ちょっと鉱石が足りなくなって来たから。・・・22番ダンジョン、空いてる?」
「ああ。空いてるぞ。じゃあコイツだ」
「エ・・・さん」
「あ・・・?」
「どうした?」
「・・・誰かに呼ばれた気がした」
「んー?
私も1番ダンジョンの閉鎖で混み合っている広場を見たが。・・・・・・うん。きっと気のせいだ。
「じゃあ行って来るわ」
「ああ。情報収集は忘れるなよ」
「了解」
受け取ったカギを手に「解錠」と呟くとカギが眩しく光り輝き、周囲が揺らいだ。
「
スワットの言葉に送られて、私は22番ダンジョンに転移した。
この都市には『情報部』というのがある。新聞やニュース番組のように、最新の情報が更新されていく。ただし『フェイクニュース』はない。
1番ダンジョンの閉鎖は緊急情報で届いた。緊急のため、ステータス画面が勝手に開いて教えてくれる。このシステムは『ダンジョン都市独自の機能』らしい。
ダンジョン内では特に、避難命令や緊急退去命令が出た時に「知りませんでした」では済まされない。それこそ生命に関わる事だからだ。
ダンジョンに転移する直前、確かに「エアさん」という声を聞いた。そして・・・見たかもしれない。『鉄壁の
すでに私は『次の
懐かしいけど・・・もう『戻る気はない』のだから。
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