第124話
「参ったわねぇ・・・」
「エリーさん?どうかしたの?」
私が食堂に入ると、エリーさんとフィシスさんたちが頭を抱えていました。離れて座っているキッカさんたちは苦笑しています。
「ああ、エアちゃん。ごはんに来たのね」
「私たちは別の場所に移るわ」
「あ、そのままで大丈夫ですよ。空いてる席に座るので」
テーブルの上に広げた地図を片付けようとしたアンジーさんを止めて、少し離れた席に座る。
「ごめんね、エアちゃん」
「別にいいですよ。あ。ユーシスくん、ありがとう」
ユーシスくんが食事のトレーを運んできてくれました。今日はスープパスタ。この世界では私がくる前まで主流のパスタ料理です。『パスタはスープで煮るもの』というタイプです。初めて会った日にエリーさんと行ったお店はコンソメスープで煮たパスタでした。あれはあれで美味しかったです。
今日はボンゴレのスープパスタ。それにサラダとデザート。果物の大量購入をしていたので、冬でも野菜や果物が豊富です。屋台の人たちは『売れ残り』が売れて、私たちも気にせず大量購入が出来て一石二鳥。
添えられたノンアルコールのサングリアで食事の喉をさっぱりとさせたら「ご馳走さま」。
「お姉ちゃん。ごはん、食べに来れる?」
「途中でチカラ尽きて寝ていなければ」
「大丈夫です。その時は俺がプレゼントで送りますから」
「あ、お願いします」
錬金や調剤は、神経を使います。そして、ひと段落つくと、疲れから寝てしまうことも。それで何度プレゼントに食事が送られて来たか。深夜は食堂の鍵がかけられていて入れないので、食器を戻しに行けません。皆さんも、空腹になったら自分のテントの中で料理するか、屋台で購入した料理を収納カバンに入れているそうです。
「エアちゃん。大丈夫?疲れてるんじゃ・・・」
「疲れているのはミリィさんでしょう?」
研究施設に戻る途中でミリィさんが心配して駆け寄って来ました。抱きつくと優しく抱きしめてくれました。
「私のことは大丈夫。でも、心配なのはエアちゃんの方よ。ちゃんと眠れてる?部屋に戻れなくても、テントの中で休まないとダメよ」
「・・・ん。でも『もうちょっと』だから」
「エアちゃん・・・」
「大丈夫。『ミリィさんパワー』貰ったから。もうちょっと、頑張れる」
ミリィさんに甘えるように頬をスリスリすると強く抱きしめられました。
「頑張らないで。ちゃんと休んで」
「これさえ終われば寝るから」
「ダメよ。エアちゃん」
このまま疲れている状態で寝たら、次に起きるのが
「エアちゃん。・・・お願いだから」
ミリィさんがこんなに苦しそうに。泣きそうな表情で必死に。・・・私の行動を止めようとしてくれています。
「ミリィさんが止めるくらい・・・今の私は『酷い状態』ですか?」
くすりと笑うと「笑いごとじゃないのよ」と言われました。
「・・・温かい」
「エアちゃん?」
「ミリィさん。あったかい。皆さんが、私に向けてくれる気持ちも・・・温かい」
・・・だから悲しいのです。
「ミリィさん。2時間。ううん。あと1時間だけ待って。・・・そうしたら寝るから」
「本当?・・・約束できる」
「うん。・・・でも、疲れているから長く寝ると思う」
「それでもいいわ。ちゃんと寝て疲れを取ってくれるなら」
ミリィさんが少し安心したような声で許してくれました。話をしながら私を抱きしめて、優しく頭を撫でてくれます。
・・・だから、甘えてしまうのです。
「ミリィお姉ちゃん」
「どうしたの?」
「・・・ううん。なんでもない」
そう言いながらギュッとミリィさんを抱きしめると、ギュッと抱きしめ返してくれました。
「私のエアちゃんは、甘えん坊ね」
「ミリィさんの『あったかパワー』を身体にため込んでいるの」
クスクスと笑い合う。
最近は忙しくて、こうしてミリィさんに甘えることもなかった。
「仕方がないよね」
ヤスカ村の件で、魔物が水面下で活動してるのが分かったんだもの。それも『知恵のある魔物の出現』で、今までとは違う対策が必要だって。エリーさんもキッカさんも。上級者ランクということでフィシスさんたちと騎士団庁の会議に出席です。アルマンさんたち、他の上級者の皆さんはキッカさんという『
・・・そして、貴族の中には「聖女様がもう1人残っているから、何かあれば救いの手を差し出すだろう」と言っている人もいるそうです。
残念ながら『
「全然死んでも惜しくもない人を亡くしました。南〜無〜」
え?魔物から
いえいえ。熨斗と一緒に赤い文字で書かれていますよ。天下無敵の『返品不可』って四文字が。
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