第123話
あの後、興奮状態のフィシスさんに代わりアンジーさんが騎士団庁に連絡したところ、王都に設置されている魔導具本体の交換をすることになりました。魔導具は設置後、一度も交換されていなかったようです。
「魔石の交換だけの方が簡単だからね」
「手抜き作業ですね」
「そうね。魔石の交換時にチェックしていれば、こんなことにならなかったと思うわ」
そして翌日に魔導具を交換・回収後、騎士団庁で分解して調べたところ、魔力が大幅に減っていた魔導具に『魔物よせ』の魔導具が組み込まれていたそうです。鑑定スキルを持つエリーさんが呼び出されて組み込まれていた魔導具を調査したところ、『設置から一年前後』と出たそうです。問題は『誰がしたのか』でした。
「・・・まさか『王都治療院』がこんな事件まで起こしていたなんて」
「そうですか?水の迷宮であれだけのことをしたんですよ?だいたい『魔物の召喚』すら仕出かしたのに・・・ 」
「・・・そうね。あの34階だって『水の迷宮を
此処は食堂のためマーシェリさんや水の聖霊のことは秘密です。ですが固有名詞を出さなくても話に不自然な点はありません。
『水の迷宮事件』で罪を暴かれた王都治療院の治療師たちは『治療師が足りない』との理由から奴隷として働いています。着けられた腕輪で治癒魔法以外の魔法が封じられて使えなくなっています。思考回路も退化していて、日常生活動作以外は何も出来ません。
「精神が壊されているからね。自分で何も出来なくなれば『薬物や魔術、魔導具の
最後は攻撃魔法の
この世界の犯罪奴隷には『人としての権限』はないようです。
「審神者が取り調べを受けているわ。・・・残念だけど、あの審神者は
「
「ええ。そして、これからも審神者は裁判所で生活することになったわ。二度と同じ悲劇を起こさないために、行動が
「あの審神者も・・・。鬱陶しいくらい付き纏って来なければ『真実しか言えない』なんて状態にならずに済んだのに」
「あら?そのおかげで、私たちは調査報告書の裏取りが簡単になったのよ。これからも取り調べで立ち会わせることになったわ」
「今までの審神者は王都治療院の所属だったけど、今は裁判所預かりだからね。『準貴族』として立場を与えられてきたけど、すでに審神者に貴族階級を与えないことになったから」
「高給取りは変わらないけどね。でも、今までより忙しくなるからちょうど良くなるんじゃないかしら?」
審神者を一度も見たことがなかったけど・・・。まだ15歳だったんですね。残りの人生がどれだけあるのか分からないけど。
審神者たちが殺した人々や残された遺族の憎しみや悲しみを思えば・・・。
人目のない場所で、頑張って天寿をまっとうして下さい(棒読み)。
春が訪れたら、騎士団庁が責任を持って国内に設置されている『魔物よけ』の魔導具をすべて交換するそうです。今度から、魔石の交換ではなく魔導具の交換をするそうです。
「砦や村、町など300ヶ所近くを交換するらしいの。その時に棲息地の調査もするから騎士団庁が動くらしいわ」
「ちょうど『新人教育』で国内を回るから、魔導具の交換や設置の指導をするそうよ。毎年の新人教育に取り込むんですって」
新人教育の一環として魔導具を毎年交換するなら、ヤスカ村のように内部の犯行じゃなければ魔力切れで魔物に侵入される可能性は低くなるでしょう。
ヤスカ村の件も
ただ・・・。犯人のウィップスが好きだった女性が嫁いだのは別の村の男性。その村は、今回の騒動より半年以上前に起きた『虫の
「その時に・・・
騎士団はウィップスにその事実を告げたそうです。
「最初は信じていなかったが、被害記録を見せられてから茫然自失になっているらしい。好きな女が死んで魔物になっただけでもショックだが、さらにその魔物に
「そのグーラはどうなりました?」
「ヤスカ村で倒した中にいなかったわ。彼処にいたのは
「じゃあ、棲息地にいるか・・・」
「別の村を襲っている可能性もある」
今は冬で雪が積もっているため、魔物の動きが遅いのが救いです。
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