第113話
食堂に入るとアクアとマリン。ボンドさんやコルデさんたち8人の『待機組』。そしてパパさんたちが一斉に私へ視線を向けてきました。
「「おねえちゃん!」」
「戦闘が始まったようです」
「アイツらは・・・」
「信じましょう。最初は驚くと思います。ですがアルマンさんには仮説ですが伝えてあります。それを元に指示をしてくれているでしょう」
「ああ。そうだな。エアちゃんが混乱を考慮したから、夕食ではなくこの時間に癒しの水を使ったスープを作ったんだ」
コルデさんが、同じテーブルに座った私の頭を撫でてきました。コルデさんの娘さんが生きていたら私と同じくらいだそうです。
コルデさんもアルマンさんと同じく『他国の出身者』だそうです。・・・他の大陸からハイエル国へ
アルマンさんとはその頃に知り合い、冒険者となってエイドニア王国まで来たそうです。国を越えて家族を探すのに、冒険者になるのが一番都合が良かったそうです。その努力の結果、五年後に別の国で難民孤児として保護されていた上の娘さんが見つかったそうです。異国民のため、他の孤児と違い誰にも引き取られなかったそうです。親と死別していない場合、親が現れたら子供は親に返すのが『決まり』だそうです。そのため「親と生き別れた」という娘さんは保護施設に残っていたそうです。
ちなみにオボロさんがコルデさんの息子さんです。コルデさんがアルマンさんと共に守備隊に入った時に、オボロさんも一緒に守備隊に入ったそうです。上の娘さんの名前はユーリカ さん。王都で冒険者ギルド長をしている受付嬢です。
たぶん、冒険者ギルドに入ったのは母親と弟妹を探すためでしょう。王都のギルドなら他国の情報が集まりやすいですから。
「お姉ちゃん。大丈夫?」
マーレンくんが声を掛けてくれて、目の前に昼食のサーモンサンドとミネストローネを出してくれました。連絡を待っていて施設から出ていなかったため、昼食を食べていなかったのです。
「ありがとう。大丈夫だよ」
「エアさん。無理しないでください。オレたちも出来る限り手伝いますから」
「はい。ですが、今は此処で残っていないと・・・」
「「なんで いったらダメなのー?」」
「お?行きたいか?」
ボンドさんが二人の頭を撫でながら笑う。
「アクア いきたい」
「マリンもいきたい」
「そうか。じゃあ『みんなとバイバイ』だな」
「「えー!」」
「なんでー?」
「どしてー?」
「そりゃあ。キッカたちと約束しただろ。「家から出ない」って」
「約束を守らなければ、エリーとキッカから『お尻ペンペン』だよなー。そんで、家から追い出されて『バイバイ』だなー」
ドングさんたちに言われると、二人は慌ててお尻を押さえて左右に首を振りました。
「ああ。エアさんは知りませんでしたね」
「実はこの二人、何度もエリーとキッカにお尻を叩かれているんですよ」
「『何度も』ということは『懲りてない』ということですね」
「エアさんも『何度もお尻を叩かれても反省しない子は嫌い』だよな?」
「はい。大っ嫌いです」
私の断言に二人が泣き出してしまいました。何も『二人が嫌い』と言ったわけではないのですが。自覚はしているようです。
「そりゃあ、誰だって叱られて大きくなります。ですが、同じことを繰り返すということは『悪い』と反省していないのでしょう?・・・そんな子は一緒にいられません。冒険者は一秒のミスが生命に関わるのです。それなのに注意されても同じことを繰り返されたら・・・。私だって巻き込まれて死ぬのはイヤです」
あれ?何故かマーレンくんまで真っ青になっています。
「マーレンも。何度叱られても同じことを繰り返すんだ。何度、物置に閉じ込められても反省しないから・・・。今度アクアとマリンが追い出される時はマーレンも一緒に連れて行って貰おうか」
ユーシスくんの言葉にマーレンくんは目に涙を溜めて首を左右に振っています。さあ。この三人は
アルマンさんからはメールが届きました。
『村に入っていた魔物は全滅させた。村の中にいる者全員に『癒しの水入りスープ』を飲ませて、他に魔物がいないことが確認済みだ。エリーたちはフィシスたちが届けてくれた『魔物避けの魔導具』を設置中だ。後で説明してやってくれ』
それを『留守番組』に伝えると、全員が安心したように息を吐きました。
「帰る時は美味いもん作るか」
「そうですね。エアさん。帰りが何時になるか教えて貰えますか?」
「はい。分かりました。それでエリーさんたちとの話は
「そうですね。お願い出来ますか?」
私は一度施設へ戻り、連絡が来たら食堂へ戻ることにしました。
何もしないで時間を持て余すのは得策ではないですからね。
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