第四章

第68話


城壁の中なのにイギリスやカナダのような田舎が思い浮かぶ広い敷地の中に、キッカさんたちの住処アジトがありました。キッカさんたちが譲り受けたルーフォートの邸より大きいです。


ルーフォートの元エンシェント邸は『町を救ったお礼』としてキッカさんたちが譲り受けました。そして、私とエリーさん、フィシスさんたちも使用出来るようになりました。これからオーガストさん主体で中を整備して、壁紙や家具などを真っ新まっさらに取り替えてから、キッカさんたちが玄関扉に『使用者登録』します。この時に私も一緒に行って登録することになっています。

以降は、ダンジョン巡りの続きをする時などルーフォート周辺で活動する時の私の拠点になります。・・・まだ整備されないので登録されていませんが、アルマンさん曰く『防犯装置を設置する』そうです。



王都を囲む城壁は端から端まで約30キロ。フィールドに出る城門は南部と北北西にあります。

そのため移動には馬車が必要です。キッカさんたちみたいに何台も馬車を持っている人は少なく、普通は彼方此方アチコチを乗合馬車が走っているそうです。日本では市バスでしょうか。


王都の中央やや北寄りに頑丈な塀に囲まれた王城があり、王都とは『城門』で隔てられています。そして城門の前に広場が設けられていて、公開裁判や公開処刑に使われる北広場と、何時でも屋台が出ていたり時々いちが立つ南広場があり、色とりどりの花壇で区切られています。


王城には王族が住まう王宮とパーティー会場が3つ。騎士団が常駐・寝泊りする騎士棟に、同じく城内の警備などを受け持つ兵士たちの兵士棟。騎士団が守るのが『人物』に対し、兵士が守るのが『王城』と分かれているそうです。

各種執務室がある執務棟と隣接して寝泊りする棟。研究室や王都治療院などのある研究施設には仮眠室が併設されているそうで寝泊りする棟はないそうです。

そして、そんな王城内で働く千人以上の人々を下支したざさえしている、料理人やメイドなどが寝泊りする棟もあります。

それらを纏めて『王城』と呼ばれているそうです。

王城の北部から西部までの半円3キロに貴族たちのやしきがあります。

北広場からその貴族の邸が集中している辺りまでが『中央守備隊』の管轄だそうです。


そして北東、というか東北東の城壁側に職人ギルドの工房が並んでいます。これは『何か事故が起きた時』に被害を小さくするためだそうです。工房が壁側に並び、向かい側に工房の商品を売る店が並び、その上に職人たちの居住区があります。もしも爆発事故が起きた時のための『暴風壁』の意味があるそうです。


南部はフィールドに出入りする旅人や冒険者たちが多く行き交うため『下町』に近いです。ちなみに城門は南南東です。真南まみなみに城門があると、敵兵が攻め込んだ時に真っ直ぐ王城まで行けてしまうためです。私が泊まる宿はちょうど真南の地区にあります。キッカさんたちの住処アジトは南南西にあります。穀倉地帯と下町の境に位置しています。宿に近いため、徒歩でも行けるそうです。


「どのくらいの距離ですか?」


「歩いて10分、15分くらいでしょうか」


遠回りになっているのは、冒険者ギルドに近い南部守備隊詰め所に寄ったからです。それだけ近い距離なら『毎日散歩途中に喫茶店に寄る』ことが出来るでしょう。


「近くても『コッソリ帰る』のはダメですよ」



・・・ちょっとだけ考えたのバレていたようで、釘を刺されてしまいました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る