第43話 突入! 獣人連合軍!
移動した先は日干し煉瓦造りの神殿のような建物の一室だった。
所々から光が漏れているおかげで室内でも何とか周りが見える。
「カラッパの遺跡だ。獣人の街カジャマラの南側にある。もし北征軍が来たらここで食い止める予定だった」
えっ、という事はだ。
「獣人連合軍に見つかるんじゃないか。奴らから見れば俺達は敵だろ!」
誰かが言う通りだ。
大丈夫なのか。
「なあに、問題ない。さっき言った通り話はもうついている。心配しないでどんと構えて俺の後をついてこい」
俺としては不安たっぷりだ。
でも仕方ないので言われた通りついていく。
暗い通路を抜けると先が明るくなっていた。
外の景色が見える。
更に言うと番兵らしき猫耳? の戦士が2人、槍を持って立っていた。
俺の後ろの何人かが思わず身構える。
「よっ、お疲れ」
「お疲れ様です」
普通にそんな返事をされた。
おいおいどうなっているんだ。
まあ想像がつくけれどさ。
「ジョン、ここでは顔パスなのか」
獣人化していなくてもという意味を暗に込める。
「まあな。あと獣人は人を顔だけではなく匂いとか魂の形でも見分けるからな。多少変装しても無意味だ」
何か知らない概念が出てきたぞ。
「魂の形って何なんだ」
「獣人でないとわからないんだけれどな。考え方や指向なんかが色や形と同じような感じで見える。この能力のせいでゲーム公式から獣人プレイが外れたといういわくつきの能力だ。獣人の魔力が少ないのはそんな処にも実は魔力を使っているからじゃないかなんて言われてもいる」
俺には初耳だ。
でも一般人と獣人とを行き来しているジョンの言う事だ。
おそらくは事実なのだろう。
嘘を言う必要も無いだろうし。
「それじゃちょいと獣人連合の司令部に挨拶に行ってくるぜ」
「そんな処まで顔がきくのかよ」
おいおい。
でもまあジョンはこれでもトンロ・トンロの町長だ。
獣人界隈でもそれなりに顔がきくのだろう。
外見以外で見分けられるならなおさらだ。
今出た入口とは別の場所にある入口に入る。
今度は窓が多くて比較的明るい通路だ。
20メートル位歩いて右側に開いた入口に入る。
中はそこそこ広い部屋だった。
豹系や犬系の獣人が何人かが巨大なテーブルを囲んでいる。
「奴らの動きはどうだ、アレクス」
ジョンがまともな感じでそう尋ねる。
「停滞したままだな。動きは見えない」
黒豹の獣人と思われる細身の男がそう返答した。
更に犬系の獣人が説明を加える。
「付近は
「そこで俺達の出番と言う訳だ。魔法攻撃と格闘戦が両方できる人間の戦士のな」
なるほど。
「でもこれだけの人数で減ったとは言え王国北征軍を相手に出来るのか?」
誰かがそんな疑問を投げかける。
もっともな疑問だな。
俺もそう思う。
だが獣人の一人、猫系の獣人が首を横に振る。
「おそらく北征軍はもう駄目だ。近づいてみればわかる。魔の気とでもいうのだろうか。 生きとし生けるものならすぐさま逃げ出したいような気が滲み出ている。長時間あの気に触れて無事な生物など考えられない」
「つまり軍は国王も含めて全滅という訳か」
「おそらく」
「でも何が起こっているんだ?」
俺は谷間の廃村を思い出す。
魔の気と言うのはあそこでファナが感じたいやな感じ、冷たくてどろっとした感じで近づきたくない雰囲気という奴と同じだろう。
そして
多分同じ現象だ。
つまりはきっと。
「まず行ってみるしかないな」
このままにしておくわけにはいかない。
どうせ
「そうだな。見た方が早い。その結界線までは行っても問題ないんだろ」
「ああ」
アレクスと呼ばれた黒豹の獣人が頷く。
「ただ結界線がいつまで維持できるかはわからない。日に日に内部からの魔の気が強くなっているそうだ。最悪の場合はあの森を放棄しなければならない」
「放棄とは」
嫌な響きがあったので聞いてみる。
「火で浄化するしかないってこった。密林と共存している獣人としてはとりたくない手段だけれどな」
「でもそれで阻止できるかもわからない」
危機的状況という訳か。
「気がせくのはわかるが今日は休んだ方がいいだろう。ウリンハナンで大分魔力を使っちまったしな。俺はもう一往復して戦力を連れてくる」
それならばだ。
「なら手伝おう。俺も移動魔法持ちだ。さっきの場所に案内してくれたらアンカーを設置する」
「ありがたい。なら頼むぞ」
「他の方々は私が案内しよう。そこそこの宿は用意してある」
そんな訳で俺はジョンと先ほどの部屋へと向かう。
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