第4章 雨期は農繁期。でも他にも色々と
第21話 農家としての挑戦
あの敵らしい男については、
情報等あれば報告するよう連絡を受けたが、結局あの後遭う事は無かった。
出来ればああいう物騒な奴とは出会わないにこしたことは無い。
職務放棄と言われそうだが、俺はファナとのんびり平和に暮らせた方がいい。
まもなく雨期になる。
雨期と言っても大雨が降るわけではなく、霧雨に包まれている感じだ。
微妙に鬱陶しいがニルカカ村では忙しくなりはじめる時期。
乾季で乾いた土を耕しジャガイモを植える等農作業が本格化する。
雑草も伸び始めるので手で取ったり土中に漉き込んだり。
なお取った雑草はバリケンの餌にもなるので何気に無駄が無い。
さて、今期俺は新たなチャレンジを色々してみる予定だ。
そのひとつが『ジャガイモ抵抗品種開発その1』作戦。
ジャガイモは連作すると土中にセンチュウが増えて収穫量が極端に減る。
またそうなった土地は今後長い間ジャガイモ畑には使えない。
この辺の主食はジャガイモなので、こうなったら収入が一気に減る訳だ。
故にジャガイモは最低4年は間をあけて輪作の輪に入れる。
更に数回この輪作をした後は長期の休閑をするという具合だ。
マシュアという芋を一緒に植えるとセンチュウが少なくなるらしい。
Wikiに載っていたので昨年試してみた結果、センチュウの密度がおおむね半分程度に収まっていた。
だがこのマシュアでセンチュウが死ぬわけではない。
あくまでセンチュウがマシュアを嫌うだけ。
だからこのままでは連作できるとまでは言い難い。
輪作の期間を短縮は出来るだろうけれど。
一番の方策はセンチュウに抵抗性のあるジャガイモ品種の開発だ。
そこで今回は昨年ジャガイモを栽培し、センチュウ密度がそこそこいる土であえて多種のジャガイモを育ててみる事にした。
勿論収穫はあまり期待できないし、センチュウ密度も増える。
だからあくまで実験用に厳重に囲った畑で行う方針だ。
なおジャガイモの品種は村々を行く行商人に頼んで集めてもらった。
その数何と32種類。
本当は地球とかで実際に使われているキタアカリとかの抵抗品種を持ち込みたかったのだけれど、それは
仕方ないので抵抗力が不明なこの32種類で挑戦だ。
この中でセンチュウに強い品種を見つけ、交配させて次世代へ……
運が良ければ集めた中に抵抗性品種があるかもしれない。
運が悪ければ何年かかるかわからない。
それでもやってみる価値はあると思うのだ。
「サクヤ様なら土の中の虫くらい魔法で全滅させられないんですか」
ファナにこの作戦を話した時、そんな事を聞かれてしまった。
「やろうと思えば出来るかな。例えば高温の魔法で土の中まで熱を通してやるとかさ。でもそれだと俺と同等の魔法使いでなければ出来ないだろ。だから誰でも出来る方法を試してみるんだ。それに俺の畑だったら万が一の事があっても、さっき言ったような魔法で有害な虫を全滅させられるしね」
つまりセンチュウ駆除の為に俺自身がこき使われるのを避ける為だ。
でもファナの受け取り方は違ったらしい。
「流石サクヤ様です。自分だけではなく皆の事を考えているんですね」
いやそういう訳じゃないと言い訳しようかと思ったが、結局しなかった。
実際抵抗品種が出来たら村の皆に分けてやるつもりだし。
また今年からバリケンの糞や枯草等を発酵させた堆肥も使用を開始する。
上手くいけばこれで収量が上がるかもしれない。
これが『堆肥による畑土の改善その1』作戦。
まあこっちの作戦は非公式Wikiも載っている位なのでまず成功すると思う。
それにしてもバリケンは色々重宝する。
草を食わせておけば基本問題ないし良く増えるし頑丈だし肉も美味い。
強いて言えば増えすぎるのでしょっちゅう間引いてやる必要があるのと卵があまり美味しくない事が欠点か。
あとたまに空を飛んで逃げたりするのもいるしな。
でも間引くのが多いのも悪い事じゃない。
肉を食べる機会が増えるし使用人にも肉を分けてやれる。
そのせいか使用人のうちウィルサンなんかはバリケン担当を自らやっている程だ。
本人曰く畑よりも面白いし卵を取ったり役得も多いらしい。
役得が多いなんて俺に自白している時点でどうかと思うけれどさ。
俺はどうしても飼っているのを間引くのに心理的抵抗がある。
ファナなんかはあまり気にならないらしいけれど。
他に『薄板を利用したマルチ代用品による雑草抑制作戦』なんてのもやる予定だ。
マルチとは、農業で使う作物の株元を覆うフィルムのこと。
流石にここにはフィルムになる黒ビニールなんてのは無いから、木の皮や薄板で作物の根元を覆ってやる予定だ。
最初に覆う作業が面倒くさいが、うまくいけば雑草駆除がかなり楽になる。
これらの工夫がどうなるか。
今から楽しみだ。
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