プレ・プロローグ第5話 仕事の計画
志村氏との面談の後半部分は給与や社会保険、勤務体制その他の説明だった。
勤務そのものは完全に自宅からでOK。
ただし1週間に最低32時間以上はログインしている事。
連絡もなくログイン時間が短い場合、最悪の場合は解雇もありうるとの事。
他に定型のレポート等あり。
社員福祉関係は健康保険と厚生年金保険、雇用保険あり。
給与は基本給が月給21万8000円。
そして書類を色々書かされる。
まあここはVR空間。
今書いた部分は家で印刷して、サインと印鑑押しをして返送する事になるそうだ。
そんな訳で今回の面談は終了。
明日から早速勤務開始だそうである。
とりあえず一通り終わった時点でログアウト。
更にVRシステムの接続を切る。
途端に襲ってくる現実世界の感触。
ヘッドギアを外せばそこは見慣れた安アパートの天井だ。
それにしても途中から完全にVRだと忘れていたくらいの現実感だったな。
流石最新システムだ、そう思いながら機器を外す。
とりあえず本日中に書類を作って出してしまおう。
貸与されたほうではなく元々の俺のパソコンを起動する。
貸与されたパソコンは仕事専用。
特にそんな決まりは無いけれど俺はその辺は別けるつもりだった。
仕事関係でも自宅でやるような作業は元のパソコンで。
メールボックスを開くと書類一式というメールが来ていた。
一応ウィルスチェックをしてから添付ファイルを開いて印刷する。
◇◇◇
書類は署名押印して近くのコンビニで出してきた。
あとは今のうちに明日からの仕事の予習をしておこう。
そもそも俺は『アウカルナ』というゲームすら知らない。
そんな訳でまずは検索してみる。
調べてみると『アウカルナ』というゲームは無い。
いくつかのゲームで共通して使っているプラットフォームの名前のようだ。
見た限りではどれもリアルタイム系オンラインRPG。
だが系統はSF系、ファンタジー系、現代兵器系等それぞれ違う。
とても同じ世界を背景にしているとは思えない。
こういう場合は配布された資料の確認だ。
起動したままの貸与パソコンを開いて説明を読んでみる。
ふむふむ。
『アウカルナ』は一つの世界ではなく、法則が異なる多数の世界が多重に存在している世界群というような存在なのか。
そういえば志村氏も『アウカルナ』世界群と言っていたような気がする。
そして俺が調べるべき世界はその中の『プルンルナ』と呼ばれる世界。
中世的世界で魔法も使える、いわゆる正統派RPG的というかナーロッパ的な世界のようだ。
この『プルンルナ』世界が探索先に選ばれた理由は簡単。
あの『大魔王』という存在が早期に出現する可能性が高いからだ。
厳密には他により早く現れそうな世界はあるらしい。
でもその世界はここ地球とあまりに違い過ぎてコントロールしていないそうだ。
とりあえずコントロール下にある世界で最初に『大魔王』が出てくる可能性が高いのが『プルンルナ』らしい。
さて、この『プルンルナ』世界はどんな感じかな。
これも検索をかけて調べてみる。
おお、これはオンラインゲームが存在した。
『パリアカカ』というオンラインゲームの世界がこの『プルンルナ』らしい。
どれどれと設定その他を読んでみる。
中心となる舞台は南米に似た大陸の中央西部山岳区域から西海岸にかけてを版図とするティワナク王国。
ここの国民になって冒険をするなり金を稼ぐなりロールプレイをするゲームだ。
プレイヤーは基本的に下級貴族の子弟。
貴族を選んだ場合は第一子、神官や軍人を選んだ場合は第二子以降になる。
最初に選ぶことが出来る地位は神官、貴族、軍人、商人、農民。
農民と商人は予め与えられた準備金の範囲内で土地や店、商売道具等を購入するところからスタート。
それ以外は神官学校や幹部養成学校、もしくは高等教育学校に入学するところからスタートだ。
もちろん学校在学中にドロップアウトするなんてのも自由。
実際学校である程度の技能を手に入れた後、ドロップアウトして冒険者になるのが主流の楽しみ方のひとつ。
こうすれば開始年齢が15歳程度で伸びしろのあるキャラクターを作成可能だ。
逆に農民や商人はお金や技能がある程度ある状態から始められるので、いきなりドロップアウトしてもある程度実戦に耐える事が出来る。
その代わり開始年齢が25歳以上なので寿命が10年くらい短く、能力の伸びしろもあまり大きくない。
この辺は監視する俺達も同じなのかと思って念の為資料を調べてみる。
どうもゲームと全く同じようだ。
手持ち資金や初期パラメーターに特典があるくらいで。
さて、何が一番俺として適しているだろう。
正直なところもう宮仕えはあまりやりたくない。
あと難易度は出来るだけ低めな方がいい。
そんな訳で俺が選んだのは……
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