第588話

「あ、え~っと……そういや諸々どうなりました?」

「……は、もろもろ?」

「母とはもう色々と話したんでしょ?」

「そうです……ね。はい。おっしゃいます通り進展はございましたねぇ」

 流れを変えようとして試みは成功。とはいえ長話するほどのことではないので割愛。

「それは良かった……のか?」

(少なくとも花菜さんとの関係は……ナニをしてるか言わなければ続けていけそうだけど。突っつかれるのはめんどくせぇなぁ……)

「…………」

(む、難しい顔してはる……。やっぱりほんまは気が進まへんのやろか……)

 相も変わらず……。はぁ、まぁいい。

 とりあえず親公認の関係になったってことね。確かなことはさ。

 そして報告が済めば特にやれることはないのよね。おしゃべりくらいかな。

 体を重ねるのは先の通り激しくて音でバレバレだから。親だけでなくお隣にも聞こえるしね。

 あ~でも一応なら可能か。ただ、彼女が望まないね。

 彼女はだから。そして、

 理由は単純。目的が繁殖だから。所謂愛を確かめるだけだとか。楽しむだけの行為は嫌いじゃないけど不満を覚えるってこと。

 特にその日の最初とか、最初の数回は……ほら……だから。それを逃したらでしょう? 一般的にさ。

 なので望まない。仮にしてしまえば欲求不満が加速するだけで満足できない。肉体的にも、精神的にもね。

 唯一で好きなのはキスくらいかな。体液を接種できるから擬似的にあっちっぽい感覚があるらしいよ。彼女にとっては。

 とはいえ一時の錯覚だから結局は昂りを煽るだけなんですけどねー。

 長時間、または何回もしていれば気が狂うほど性欲増し増しの増しになっちゃって彼を襲ったときみたいになっちゃう。いや、場合によってはさらにケダモノになるかもね。ま、さすがに前回のアレコレで学習したろうから平気だろうけど。だからさっきも頑張って誘ってみたわけだしね。

 ……っと、少々私の語りが過ぎたかな。話を進めよう。

「とりあえず、隠れてわざわざ~とかはもうしなくても良さそうっすね」

「へ? そ、そうですね。そこはお許しいただけるでしょう」

「あと問題なのは……なんだろ?」

「ほうですね。なんでしょ?」

(俺がからかわれる以外で)

 止められないもんね。対策しようがないから。

「あ、あった」

「それは?」

「あ~……えっと……」

「?」

「えっと……ですね……」

「ふむふむ」

「言いづらいんですが……」

「どんなことでも受け止める覚悟はあります」

「じゃ、じゃあ言いますけど……」

「どんどどうぞ!」

「……行き来するための交通費が、学生にはキツイっす」

「…………たしかに!」

 そりゃキツイでしょうよ。毎回電車かバスを使わなきゃいけない立地だもの。学生の小遣いじゃ辛いよ。彼、バイトしてないしね。

 で、まぁ彼女の財力ならすぐ解決できるんだけれど。お金の話をしてしまってちょっとこの後面倒なことになるんだよねぇ。

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