第586話
「えっと他にはっと~。なんか良いのあったかな~?」
「うちはそろそろ片付けたほうがええと思うんやけどなぁ~」
「え~。花菜さんもお淑やかな見た目してお好きなくせに~。今さらそんなこと言っても――」
――バン!
と、開かれる扉。その音と現れた相手に固まるのが
そして部屋の散らかり具合を見て固まるのが
そんな二人をよそに展開が読めていた
「こ、こんにちは~」
「…………」
モジモジしながらご挨拶。挨拶されても彼は未だ動けず。
(あ~。やっぱり無理にでも止めたほうが良かったかもしれ――や、これうちも怒られるんとちゃう……? き、嫌われたらどないしよ!?)
これこそ何を今更だよ。いっそ怒られてしまえ。しこたまお仕置きされてしまえ。そこまでいくとむしろご褒美だろうけども。
「お……」
「あ、兄さんお邪魔してまーす」
「お……お……」
「留守にしてたから私が代わりにおもてなししといたから」
「お……お……お……」
「あ、お礼はいらないから。じゃ、私はこれで――」
「お前はなんてことしてくれてんだバカ野郎がぁ!!!」
「んぁああああああああああ!!?」
窓から逃げようとしたところを取っ捕まえてベッドの上でキャメルクラッチ。
「ひょ! ひふひぶっ!」
あらまぁ。顎はもちろんのこと彼の手のひらがほっぺを押し上げでとんでもぶちゃいくになってるよ。
そしてそんな様子を眺めて彼女は何を思ふのか。
(え、ええなぁ~……うちもこのあとされてまうんやろか……)
なんでちょっと期待込めてんのかね。この変態め。
「どうだ!? 反省したか!?」
「ひ、ひぶぁ! ひぶぁあ!」
「なんて? ちゃんと言いやがれ!」
「んのぉぉぉぉおおお!?」
「ノー? 反省してないと? そうかわかった!」
「んのぉおおおおおおおおおお!!?」
(のぅわぁ! 絶対わざとでしょそれぇ!?)
もちのろんまかのろん。わざとだよ。
だってほら。反省してるかって言われてしてるって答える人間で本当に反省するのってほら。ほぼいないし。
現に普段の言動から彼をからかいまくってるのわかるしね。仕方ないね。
「ふん!」
「ぼはぁ! はぁ……はぁ……」
とはいえ、彼女のいる前じゃこのくらいが限度。
よくよく考えたらお客さんもいるしね。招かれざるというか招きたくなかった客が。
「さっさと起きて帰れお前」
「こ、これが女の子への仕打ち? 兄さんの代わりにおもてなしした妹分への仕打ちなの!?」
「頼んでねぇよ不法侵入者」
「なんでぇなんでぇ! おととい来っからな! ファッ○ュー!」
「二度と来るんじゃねぇムッツリスケベ」
「む、むむ、ムッツリちゃうわ!」
「はよ帰れ!」
「キャー! 言われなくても帰るよ!」
やっとのこと窓から去っていく結嶺ちゃんを見届けつつ。改めて彼女へ向き直るんだけれど。
「……なにやってんですか?」
結嶺ちゃんが出ていった瞬間ベッドにうつ伏せになっておられる。意図はというと。
「う、うちも勝手に色々と見てまいましたし。さ、どうぞ! お仕置きをば!」
「…………」
(なんで罰なのに目輝かせてんだろ……)
そら被虐趣味があるからだよボーイ。わかりきってるだろう?
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