第565話

「…………」

「はぁ……っ。はぁ……っ」

(お、終わった……か? し、死ぬかと思った……! マジで殺されるかと思った……。溜まってたモン全部引っこ抜かれたし、しばらくはもういいや……はふぅ……)

 彼女に跨がられながら生を実感する彼。彼女のほうはぶっ通しで三十分近く彼を喰らい続けたのにノーリアクション。だって。

(にしても、さすがに満足したっしょ。こんだけしたんだから)

「ど、どうでしたか……?」

「……っ」

(あ、あれ?)

 だって、彼女からすれば、どうしたら良いかって感じだもん。

 激しく○しておいて全然良くなかったとか言える? なんのために彼を襲ったんだよってなるじゃん? ま、元を辿れば先に襲ったのは彼だけど。今の彼女はそのこと棚上げしてるからノー関係。

「か、花菜……さん? どうしたんすか?」

「…………」

 上に乗ったまま。は着物に隠れてるけどのまま事後に至る前。彼女は沈黙を保つ。

(なんで……やっぱり、良くない。全然悦くない……。欲しいのに。たくさんのにっ。何で? どうして? 手を握られた時の方が……ずっと幸福よかった。今はもっと深く繋がってるのに。触れあってるはずなのに……)

 そして、耐えきれなくなってきて。

「ごめん……なさい……」

「え、ちょ、ちょっと……」

「ほんまに……ごめんなさい……」

(え、えぇ~……)

 泣き出しちゃった。

 彼も急に泣かれてビックリ驚き驚愕と困惑。

(な、なんなんだよ……。女心ようわからんよ……)

 いや彼女これを女全体の基礎的な心を持ち合わせてるように思ってほしかないんだけれどもね。

 経験の薄い彼にそのあたりの区別……いや、経験の浅さは関係ないか。彼にとっては彼女は飛びっきりの女の子なんだから。少し年上の。うん。少し年上。

「あ、あの。なにに対して謝ってるか教えてくれたら……とか思ったり」

「…………」

 とりあえず察するのは不可能ということで直接聞くことに。うん。それは良い判断だと思うよ。今回ばかりはね。

 真っ直ぐ聞けば真っ直ぐ応えてくれるから。彼女。

「……あかん……かったの」

「な、なにが? です?」

「これ」

「うっ」

 ……ナニをしたかはあえて詳しく言わないでおくよ。

 まーあれだ。少しお腹に力を入れたんだよ彼女。それだけだよ。

(……あ~。なるほど。あれだけしたのにまったくなんだ……)

 けれど、彼はそれでやっとどういうことがわかったみたい。

 わかったのは良いんだけれど。

(で、でもこれ……どうしたら良いんだろ……)

 既にやりきった後だから余計にねぇ~。そうなるよねぇ。

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