第551話
(えっとぉ……彼のクラスはどこだったかな? しらみつぶしでいいか。というか昼休みだからどこか行ってるかも――いた)
いっそ校内全部を回ろうかと考えていたようだけど普通に見つけたみたい。
ま、隣のクラスだしね。彼もまだ移動してないし。
(さて、と。どう切り出そうか。まずは様子見? かな?)
ってことで入り口で様子を見ることにしたようだけど。彼は机に突っ伏したままで昼食に向かおうともしない。これじゃ観察し甲斐がないなと思ってると。
「よう兄弟。ランチ行こうぜ」
「……マイク。お前なにしてんの?」
彼に声をかけたのはもちろんアフリカ系アメリカンの彼。
ただ制服を着崩してて髪も銀髪にしててピアスも開けててド派手だね。紳士とは程遠い。
んで、なにしてんのって質問。ちょっとおかしく思うかもだけど。そうでもないよ。だってさ。
「今来たとこだろ? なに? 昼飯だけ食いに来たのけ?」
「おいおい。その言い方やめろよ。まるで俺がわざとサボったみたいじゃん?」
「違ぇの?」
「NO.寝坊したんだよ。それからムラムラしてたから一発(以上)シてたらいつの間にか十一時半で急いで来たんだよ。欠席よか遅刻でも出席したほうがマシと思って」
「そらそうだけど……」
「まぁ、んなこたぁ良いじゃん? とりあえずランチだよランチ」
「……」
そう言ってバシバシ彼を叩いてるわけなんだけど。その手でついさっきまで……って思うと複雑な気分になるよねぇ。
同時に彼の場合はもう一つ。
(朝から盛るなとは思うものの、今は羨ましいな)
もう一週間以上発散できてないからねぇ~。しかも別に性欲がないわけでなくたんまりある上でだもの。寸止めや生殺しが可愛く思えるよ。あ~哀れ哀れ。
と、そんな思春期男子の悩みは置いといて。
「わかったよ。学食で良いよな?」
「あぁ」
「じゃあいくか。それと大したことじゃないけどなんかおごって」
「いや大したことすぎ。俺も金ないんだよ。この前新しい(大人の)オモチャ買っちゃって」
「……ほどほどにしとけよ」
本来人差し指と中指の間から親指を出すところ、教室ということで人差し指と親指の腹を合わせながら中指をへの字に曲げた改造フィグ・サインによって(大人の)を表現した友人に対してほどほどとか言ってるこの小僧も持ってんだろうがって話だけどもね。
いや、君たちティーンだろう? 本来まだ早いからね? そらその時代ならいくらでも手に入れられるだろうけどさ。
で、まぁ男子なら多少伏せてるとはいえ察することができる会話内容だったわけだけど。
それを観察してる女子はというと。
(……? さっきからなんの話だろ?)
でしょうね。完全にわかってないわ。
(とりあえず学食に行くのか……。このまま観察に徹する? いや、でも大女様のことを思えばできるだけ多くのことを知っておいたほうが良いか。大女様のこと自身も多少教えて良いって言われてるし。よし、そういうことなら)
ってことで教室に入ってまっすぐ彼らの元へ。そして目があった瞬間に。
「私も一緒に良い?」
「「は?」」
お昼のお誘い。
急に話しかけられた男子二人は硬直。
だって学年で一番有名な文武両道なその辺のイケメン男子より人気な女に話しかけられたんだもの。
そらそうなる。止まらざるを得ないね。
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