第550話

「…………?」

(雪日姉さん? 珍しい。なんだろ?)

 学校の昼休みに入り、とりあえずスマホを確認するとメッセージが届いていたご様子。

 しかも昼休み開始時間ピッタリっていうね。無駄にタイミングばっちり。無駄に几帳面。

 ちなみにこれは雪日ちゃんがただ単に几帳面ってわけじゃない。和宮内の人間は余裕があればとりあえずスマホで連絡が来てないか確認するように教育されてるの。

 だって、いつ親族間で共有すべき事件が起きるかわかんないしね。

 で、彼女に届いたメッセージもある意味で緊急を要するモノ。


『近々大女様と共にそちらへ足へ運ぶことになった。それで夕美斗にはとある人物の素行調査をしてもらうことになった――』

(……? なぜ? というか決定事項?)

『同級生に天良寺才といういけすかないガキがいるはず。お前はそいつに接触して大女様についてどう思ってるか。というかまた会いたいとかそんなことを聞いてこい。これは命令。以上』

(……なんで? 経緯は? 説明は???)

 書いてあることはわかる。理解はできないけど意味は通じてる。

 その上で訳がわからなくて眉間にシワを寄せて首を傾げている。傾げざるを得ない。

 そりゃそうよね。だって急に話したこともない同級生に一族で一番大事な隠された存在である彼女について問い質さなければいけないのか。

 うん。わかるわけがないね。ちゃんと説明してあげなよ親戚のお姉ちゃんなんだから。

(……とりあえず聞いてみよう)

 ここで年上の言うがままにならないのはむしろ大人だよね。うんうん。聞くのは大事。

『理由はなんですか?』

『良いからやれ』

(返事早いな……というか説明してくれないんだ……。よっぽど機嫌悪いのかな)

 普段真面目だし説明を省くなんてしない性格なのはわかっているからこそのこの対応への疑問。

 だからこそ、緊急なのはわかるけど。理由がわからぬまま命じられたままはやはり腑に落ちないので。

『説明してくれないなら直接大女様にメッセージ打ちます』

『わかった。やめろ。殺すぞ』

(怖いな……。本当に機嫌悪いんだ……)

 雪日ちゃんが怒っていると確信は得たものの、その理由がわからない。

 でも、その答えはすぐにわかるからと返答を待つ。

「――――」

 そして、きっちり説明を受けたわけですわ。

 同級生が自分家のおばあちゃんと関係を持ったってことを。

 しかも、数日間に及んで濃厚なヤツをしたと。

 思春期かつ真面目な女の子に説明したわけだ。

 そんなことをしたらさ。

「~~~~っ! …………!」

 夕美斗ちゃんは顔を赤くしたり青くしたり白目剥いたり泡を吹いたり一人悶え苦しむ。

「ど、どうしたの和宮内さん!? 具合悪い!?」

「……いや、大丈夫。心配してくれてありがとう」

「本当? 無理しないでね」

「うん。大丈夫だから」

 そんな様子を見たクラスメイトは心配になって声をかけるも、気丈に振る舞う。

 むしろこれが良かったのか冷静になれた。

(とりあえず。何故かはわかった。これは確かに自分の目で確かめたい)

 ってことで真剣な顔を浮かべたまま彼女は顔だけは知っている同級生のもとへ向かうのであった。

 さて、どうなることやら。

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