第463話
「ん? あいつは……」
「わっ。大きな人……? です……ね?」
屋敷に入ろうと思ったけどつい強い気配があって目をやっちまった。
そういや久々に見るんだよなメズキのこと。いつもこっち来るときは無人島みたいなとこ借りて影使う練習してたからなぁ~。なんならもう必要ないからこっちに来てすらなかったよ。
「んお? おうおう! ようきたが小僧っ子! なんぞ金ぴかひっつれて何用が?」
「……っ」
俺たちに気づいてこっちに近づいてくる大きな鬼さん。
結嶺は俺たちの様子から知り合いってのはわかるようで目に見えてうろたえてはないけど、震えながら服掴んでて正直ビビってるっぽい。
つかこの阿呆鬼。お前さ。
「何用ってお前……カナラから聞いてねぇの?」
「おん?」
あーあー心当たりなしね。でっけぇ体で小首かしげやがってよ。
果たしてこれはカナラが言い忘れたのかこいつが忘れてるのか。
……出会いを考えればこいつが忘れてる可能性大と言わざるを得ない。
「っと、それどこじゃないが。白銀の
「あ~……」
お前の行ってる白銀が誰かわかったけど俺の予想が正しければこれは……。
「仕方ない。迎え撃つが!」
「結嶺、ちょっと離れてろ」
「……? は、はい」
被害がいかないように結嶺に距離を取らせましてと。
よし、ばっちこい。
「……!」
屋敷の影から走って現れた
ヤツは速度を上げてこちらに向かってきた!
「ぬぅあは! かかって――」
「ふん!」
「んぶぅはっ!」
「兄様!?」
案の定というかなんというか。メズキを無視して俺のほうに突っ込んできやがったよこの白銀弾……。
いや突っ込んでくるのは良いけどいちいちマナ込めるのはやめろ。普通に痛ぇよ……。
てかお前、なんか……。落ち着いたと思ったけど、同時にやるときゃ一段とパワフルになってないか?
踏ん張ったつもりが数センチ後ろに下がるわ体がくの字に折れ曲がったまま戻れないわ。なにより、なんか前より痛いんだけど……けふっ。
「……」
メズキはメズキで構えたまま手持ち無沙汰。そらこいつも勘の良いほうだからコロナがそこそこの威力で突っ込んでくるのはわかっちまったからスタンス広げて迎撃体勢とったんだろうよ。
だが残念こいつがタゲとったのは俺でしたってな。
こっちとしては全然嬉しくないし、向こうを撃ち抜いてほしかったと思うわ。マジで。
「ふんっ。ふぅ~……っと」
「んぅ~」
体を無理矢理戻しつつ、コロナを抱える。
するとコロナも勝手知ってるってもんで首に手を腰に足を回してくる……ってあれ?
「なんだお前。その格好」
コロナをよく見てみると和服……振り袖かこれ? 着てるわ。
意識して見てなかったから遠目で気づかなかったけどめっちゃ走りづらそうな格好じゃん。なんでメズキとじゃれてんだよお前。
「んー」
「あん?」
なに。
「んーっ」
なんだよ。
「んー!」
「兄様。女の子が普段と違う格好してたら」
「……………………あぁ、なるほど。似合ってるぞコロナ」
「んむ」
「だーいぶ間が空いてましたね」
いいじゃん別に。満足気だし。
そもそも俺にそういうのを期待してはならない。改めてよく学べ義妹よ。
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