第453話

 四月。かれリリンの出会った日。本当は君じゃなく神薙羅のところにあのゲートは繋がるはずだったんだ。

 知っての通り彼女はたくさんの不老だけど脆弱な同胞と共にある。それ故普段からある程度力は抑えなくてはならない。

 だから、警報は鳴ることなく。紅緒、君が出張ることもなく。二人は学園生活を始めるんだ。

 二人の生活は初日を初夜とするもとても穏やかでね。戦績も今同様無敗を貫くよ。なんなら三年通して。

 マナはリリンと出会えなかったからまともに使えるようになるまでは時間がかかったものだけど、それでも神薙羅かのじょの桃があれば普通の人ならばその枷から脱することができる。

 が、かれの存在はとても頑固だから桃を食らうだけじゃ人をやめるには至らなかった。マナをリスクなく使う程度で収まってたよ。人のままね。

 それに、彼らは互いに溺れていたから。物理相互侵食セッ○スを繰り返すことで、より時短にはなっていたろう。

 本来のかれは今ほど人格に異常はなく、素直に神薙羅かのじょを愛し。彼女も彼の愛に応えた。

 学園を卒業したら普通に魔法師と契約者と夫婦めおとを兼ねて時を重ね、刻んでいった。

 それから百と余年が過ぎ、かれが寿命を迎える。

 何度桃を食らおうと。何度体を重ねようと。何度同調しようと。人をやめることができなかったんだ。

 神薙羅かのじょでは、力不足だったんだよ。かれを超越者に至らせるには。

 かれは私が求めていた神と呼ばれる宇宙のシステムをこわせるに足る素材。ここでこのまま殺してしまえば私の目的はまた数千年か果ては数万年先送りになってしまう。

 そんなの御免被る。

 だから、運命をいじらせてもらった。

 リリンやコロナも元々縁はあったんだ。しかも、神薙羅かのじょと違って超越者に至れる素材。けれど神薙羅と出会うことで新たな契約者を喚び出す機会は訪れなくなる。その程度には強いからね。神薙羅かのじょ

 だから私はまず神薙羅かのじょとの縁を封じ、リリンとの縁を強くして最初に出会わせた。オーガスタ、君に先に会わせた上でね。

 退屈しているリリンかれ魔力迷廊ラビリンスを見れば必ずオーガスタになんとかさせようとする。

 私もかれリリンを侵食するように手は加えていたけど。オーガスタによってさらにかれが人間から逸脱するのが早まって良かったよ。予想通りだけどさ。

 さらに自らを焼き潰すコロナへの侵食も行い、使えるようにもしてくれた。これも予想通り。

 一番思い通りになったのはロゥテシアの存在だけどね。アレも神薙羅同様力の足りない素材だったけれど。その気性がとても都合が良かった。

 自分の伴侶を求めることより、生活を支える縁の下の力持ちになることに心地よさを感じるところがね。

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