第449話
才……様……? 初めて呼ばれたぞ。こいつが初めてとかいうのでなく人生で初。会ったときから今まで
リリンから冷静さも頭の回転もそれなりに奪ってるのに動揺が止まらねぇ。
「才様……才様……。お許しください……お許しください……」
と、とにかく。まずはカナラを落ち着かせないと。異常事態なのは明らかなんだからまず一つ一つ解決しないと話が進まねぇ。
「カナラ、落ち着け。別に怒ってないから」
そもそも許してとか言われてもなんのこっちゃかわかんないし。
その辺りを含めて今はすがりつく手を握って、目を見て、どうにか会話を試みないと。
「嗚呼……嗚呼……っ。貴方様もお忘れに……。如何にしてこのような……。
「忘れても何もなんのことだかわかんねぇって……。いっそ一から説明してほしいくらいなんだけどとりあえず落ち着け」
「
「は?」
俺たちが初めて会ったときのこと……か?
「お前と始めて会ったのはお前んとこの世界の……」
「否……否でございます……。
「そこまでだよ
「ぁ……」
「!?」
突然横からカナラの頭を真っ白な指が小突く。カナラの意識はそれだけで落ちて、俺に体を預けるようにして倒れ込んだ。
それ自体は大したことじゃない。
いや、カナラが気を失ってるから大したことではあるんだけど。息もあるし特に危ない状態になったとかじゃないから。今起きてることを考えれば大したことじゃないって意味。だって――。
――いったいどっから。いつからいたんだこの女……?
髪も。目も。体も。全部真っ白で。まつ毛も眉も瞳さえ白い。それぞれが微妙に異なる白で、影もあるから部位がわかるだけで。一歩間違えばシルエットしかわからないんじゃないかってくらいの
こんなに目立つ見た目をしているのに気配がまったくない。マナも感じない。未だに俺とカナラ以外周りに誰もいないって言われたほうがしっくりくるぞ。
見ているのに、存在を認識できないっ。
「構えなくても良いんだよ
「……すでに害されてるような気がしないでもないんだけど?」
大分感覚は麻痺って来てるけど、意識が絶たれるってかなり害されてる部類に入ると思うんだわ。
「それは仕方ないさ。彼女の楔が抜けちゃったんだから。まぁこのタイミングで抜けるのはわかっていたから差し直しに来たんだけれどね。やれやれ私も雑な仕事をしてくれる。一つ上なら相応に行使してくれれば良いのに。そう思わないかな?」
「はい?」
「わからなくて良いよ。今はまだね。近いうちにわかるだろうし。二年後辺りには。それまでは――」
「……っ」
――おやすみ
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