第385話
不適な笑みを浮かべる二人。
「私、あんときよりも強くなってるんだけど。それでもやりたいんだ?」
「むしろ望むところです。貴女はマナは凄まじいですが制御がおぼつかないので。コントロールできるようになっているとしたら私とも良い勝負ができるでしょう」
「おんやぁ~? なんかなめられてる感あるの気のせい?」
「気のせいですね」
「でも私より強いって言ってない?」
「今までの貴女ならというお話ですよ」
「……いや同じことじゃね?」
「ふふ♪」
「ごまかすなし」
事実ジュリアナは交流戦あたりの伊鶴相手ならば辛うじて勝利を納められるだろう。
が、伊鶴は最近ネスによっていじられて大幅に戦力が上がっている。
今やれば、どちらが勝つかわからないだろう。
何故ならジュリアナもまた、大きく成長しているから。
「てかマナうんぬんがわかるんだ。サンディでもわからないのに」
「ちょっとわけあって契約者との同調率が高いんです。契約者はマナを認識できる生物なので契約者経由で感じるくらいは可能ですよ」
「ふ~ん」
伊鶴は意識を集中してジュリアナを見ている。
ハウラウランの存在と混じり、マナを完全に感じられるようになっているのでジュリアナを視てみようと思ったのだ。
(へぇ~。こりゃすごい。マナの量は私よか少ないけど今のゆみちゃんより多いかも。しかもなんか変な感じ。ネスちんに会ってないはずなのに私らにちょっと近い。わけあって契約者と混じりやすくなってるって言ってたけど。こりゃマジだな。でも――)
「マナを感じ取れるのに私をなめるとか見た目通り高慢ちきだな!」
「見た目通りってどういうことですか……っ。それに、侮ってませんよ」
「本当かぁ~? ジュリー?」
「壁際にねがえ――こほん。貴女たちE組の一部は急に別人のように成長するので。あまり過去は当てにならないんですよ」
(なんで何百年前の日本のアーティスト知ってんだよ……。潰れる前提のネタだったのに一瞬ノッてきてビビッちまったよ)
珍しく口の端がヒクつくほど動揺する伊鶴。
と言っても、ジュリアナはすぐ咳払いをして話を戻したのでネタを振られることはなかった。
(あのままもっとコアなネタ振られたら危なかったぜ。ふぅ~)
しかし、いつまたネタを振られるかわからない。
伊鶴は悲惨な未来を回避すべくこの場からかっこよく離れる方法を実行する。
「――よっと」
「あ」
伊鶴は空間を歪曲し距離を短縮。
ジュリアナのワッフルのチョコがコーティングされた部分をフォークで奪う。
「ま、間違っちゃないね。私らE組はまた一段とおかしくなってるから気を付けな。あむ」
「……」
ジュリアナは返答せず真剣な顔で伊鶴を見つめる。
伊鶴はその顔を待ってたと言わんばかりに立ち上がる。
「じゃ、次は試合で会おうぜ」
(決まったぁ~!)
最早一瞥もくれることなく立ち去る。
内心で今の自分を褒め称えながら。
ジュリアナはそんな伊鶴を見送り、そして自分の皿に目を移す。
「私のワッフル……。チョコ~……」
……伊鶴のテクニックよりも、奪われたことを嘆いていた。
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