第331話
「何を出せるんだい? 君の覚悟のほどを口にしてみなよボーイ」
口にしろって言われても。
特別何を懸けてでもって掲げてるモノはないんだけど。
「父親と、それから魔帝に噛みつくんだ。それなりに心の準備はしてるんだろう?」
い~や? 全然してません。
何分こちとら人間やめてるもんで。人間らしく不安感とか覚悟とか抱きづらくなってんですよ。
……でも、まぁ。そうだな。あんたの望む言葉を言って、有言実行するくらいはできると思うぞ?
「さぁ、言ってごらんよ」
「……」
立ち上がり、アレクサンドラに近づく。
デスクに手をついて、アレクサンドラの顔を近くで見つめて。ガンを飛ばすように言ってやる。
あんた、こういう演出好きそうだからな。
「なんでもやるよ。あんたが望むことを。どんな無理難題でもやるよ」
「……!」
さすがに驚いたのか、目を見開く。
いやいや、こんなの王道でしょうが。つか、あんたが言わせんだろ。なんで驚くよ。
「あはは! まさか本当に言うとは思わなかったよボーイ!」
あ、そういうこと? リアルで言うバカはいないだろうけどとりあえずやってみた的なヤツ?
ハハハ~。そんな理由で人生棒に振りかねない台詞吐かせやがって。はっ倒すぞ。
「おや? 不服かい? ミーは聞いて良かったと思ってるんだけど?」
「何故でしょうか理由を聞いてもいいですかね? 理由次第じゃ頼んでる側であっても一発くらいゲンコツかましたいですな」
「ワオ。怖い怖い。なぁに。君の本気度が知れて良かったって思うのはイケないことかな?」
「……」
そらあんた視点なら良かっただろうな。魔帝の名前をかすっていうのはお互いにリスキー。
もし悪用しようものなら俺は未成年だとしても終身刑。アレクサンドラも何かしらの責を被るだろう。
だから、本気で覚悟の程を聞いたなら俺も別に気にしない。言わないと高をくくったのが気にくわないだけでーす。べ~っだ。
「それとも? もしかして嘘だったのかい? なんでもするっていうのは」
「……本気だよ」
「女装しろって言っても?」
「メイド服でも着ようか?」
それで魔帝の名前が借りれるなら安いね。
……撮影しようものならデータは影で破損させてもらうけど。
「一晩ホテルに泊まろうって言っても?」
「別に良いけど。未成年に手を出したら捕まるのはあんただぞ」
「バレなきゃ犯罪にはならないんだぜ?」
良識ある大人の台詞とは思えねぇな。
まぁ、泊まるだけならかまわないさ。手を出そうとした瞬間カナラでも喚び出してやるからよ。
俺がノリ気じゃないのにそういうことしようとしたらあいつはたぶんキレるぜ?
「あとは……。そう、例えば……死ねって言っても? 君は応えてくれるのかい?」
「良いよ。殺せるものなら殺しても。……やるのは全部終わってからにしてほしいけど」
「ふふ。だろうね。じゃないと命を売る意味がない」
満足げな笑みを浮かべるアレクサンドラ。
悪いな。今のはちょっと卑怯だったかもしれないんだわ。
だって、俺人間やめてるから。
しかもリリンを投影してるんだぜ?
たぶん。あんたじゃ殺せないんだよ。もう。
たとえバラバラになっても。俺は死ねないくらいには進んでんだわ。
だから、命を懸ける風に言ったけど。無理。
懸けたくても。捨てたくても。できない体になっちゃってんだよ。残念ながら。
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