第255話

「という感じの話をして死骸を渡して帰ってきた」

「壮絶に大問題じゃねぇか」

 夕食の始まりから終えるまで話聞いたけどなかなかのボリュームだったわけで。んなことが気にならないくらいとんでも大問題。

 なんだよリリンの腕もぐ時点でヤベェのにリリンが勝てないヤツいんの? は? 死ねよ。それで解決だからもう死ねよ。

「そういう事だから我も成長せんとな。数十年振りに。クハッ」

「え、お前それ以上強くなるつもりなの?」

「でなければいずれ相見える強者と楽しめんだろうがド阿呆」

 そこまで言わなくても良いじゃん。バカ。

 たしかに強くならないと将来ただ殺されるのを待つだけになるけどもやね。

 お前十分イカれた強さしてるのにさらに強くなろうとしたら誰でも聞き直すからな? 俺の気持ちも理解してくれ。

「……とりあえずこれからやるべきことはなんとな~くわかった。俺とカナラもディスなんちゃらとエンカウントしたことあるし。お前ももっとちゃんと考えて戦力強化もしようぜ~的な話がしたいんだろ?」

「いや別にそういった意図はなくてだな。ただの報告」

 ねぇのかよ。ちょっとは俺のことも気にしろよ。バカ。

「あ~それとだな。この腕をすぐに生やしたいところではあるな。今後に備えて」

「ふむ……」

 たしかにとんでも生物たちがいつ襲いに来るとも限らないし、リリンの戦力が削れてるのは怖いな……。治療は急務だわ。

「で? マナでも送れば良いわけ?」

「マナは足りてる」

「じゃあ俺にできることないな。自然に生えるのを待とう」

「とぼけるな。あるだろうが」

「……」

 そりゃあわかるけどさぁ~……。嫌だよ正直。もうなんなんだよこの月1くらいにある流れさぁ~……。

 嫌じゃないけど嫌だって俺言ってると思うんですけどねぇ~? 記憶抜け落ちてますか? 腕だけでなく脳みそもいただかれましたかぁ~?

「ほれ。ほれほれ。早くしろよ」

 はいそうですよねわかってる顔ですねそれ。ムカつくわ~その挑発的な面。ぶん殴りてぇ~。

「良いのか? 早くしないとコロナが戻ってくるぞ」

 親睦を深めるために今コロナを風呂に入れてるのカナラだから必然的にカナラも来ますね恐ろしい。

 あいつのことだからなにも言わないだろうし当然だよね~的な感じになるだろうけど。俺の予想では陰でヘラりそうだから目撃はされたくねぇなぁ~……。

 あいつの泣き顔や困った顔や照れ顔は好きだけど限度はある。

 うん。この流れはもう覆せないだろうからせめて気づかれる前に済ませよう。

 あ、ちなみにロッテはおつかい中。うちではよく食べ物が切れるんです。大食漢が二匹いるもんで。

「わかったよ。まったくこのクソロリババアめ」

「内心悪口叩いてるだろうなぁ~と思っていたし時々漏れてもいたがとうとう隠す事をやめたな」

 別に気にしねぇから良いじゃねぇか。罵倒くらい甘んじて受けやがれ。

「良いからさっさと済ませるぞ」

「お?」

 リリンは意外そうな顔で俺を見てくる。押し倒したらそらぁな。

 しかもゲートを開いて上半身だけリリンの部屋のベッドに移動してる。念のため念のため。

「音漏れ対策のつもりか? 肝の小さいヤツめ」

「黙れ。さっさと吸えバカ」

「ん」

 舌を噛み切ってリリンに自分の血を口移し。相変わらずすごいことしちゃってるわ。

 あ~くそ。最近のこいつの見た目前と違ってただの小柄な美少女になってるから嫌悪感が少なくて逆に嫌だわ。全然キスが嫌じゃないのが嫌。矛盾してるけど。嫌。

「んぢゅる。ちぅ」

 噛み切った部分に舌突っ込んでエグってきやがる。

 痛くないし出血も激しくなるからそれだけ終わるのは早くなるはず。

 な~んですが~。

「んふぅ……はむ。れるれる……むちゅ」

 長いんだけど(半ギレ)

 もう十分飲んだろテメェ口離せや。

「……っ」

 離せって! その両手を離せよぉ!(怒)

 両……おい! 生えてんじゃねぇか! 用済みじゃねぇか! 離せドスケベババア!

「んふぅ♪」

 笑ってんじゃねぇぞ!(激怒)

 俺がテメェの唇を噛み切ってやろうか!? あぁん!?

「んぶっ!?」

 あ、あれ? なんかケツになんか突っ込んで……。

 あ……っ。あ……っ。なんかグリグリされてる……。

 抱きつきながらグリグリするこの感触は間違いない。コロナだ。もう風呂から出て――。

「……」

「!?」

 め、目が合ったぁ~……っ。目が合い申したぁ~……!

 横に目を向けたら風呂上がりの火照った体のカナラが寝ていらっしゃったぁ~!

 あ、髪がまだちょっと濡れててエロいぞ!

「……フム。バレてしまったな。では終わるか」

「私の事はどうぞ気にせずごゆっくり♪」

 できるわけねぇだろ。目に光を戻してから言ってくださいお願いします怖いから!

「では遠慮なく」

 遠慮しろふざけんな。

 真横にヘラった面した女いてよくまだ続きしようと思えるな?

 それ以前に即行で治療終わったんだからもう俺を解放してください。俺の男の部分はとっくに反応しちゃってんだからこれ以上刺激すんな?

 ……って、そうか。キスじゃん。キス。キスか~。キスね~。なるほどね~。

 あれですよ。できないようにしちゃえばいんですよ。

 前にこいつ言ってたからな。キスしたくない条件。

 それを満たしてしまえばこの淫らな戯れも終わるわけですよ。……ちょっと過剰な言い方かこれ。

 ともかくとして、すまんなカナラ。手伝ってもらうぞ。

「よっと――ん」

「ふぇ――ふみゅ!!?!?!!?」

 リリンに口を塞がれる前にカナラを引き寄せて唇を奪ってやる。

「はぷ……っ。ちょ、坊……。ま、まっれ……ぁ……。んちゅ……ゃ……ぁ//////」

 しかも濃厚なやつを今度はリリンに見せつける。こうしちまえばさらに萎えるだろう。

 ……にしてもカナラえちぃな。

 なぁんでこいついつまでも初心なの? 処○だからですか? 膜張り娘だからですか?

 どっちでも良いけどそろそろ慣れても良いと思うよお前。

 あ、いや。やっぱお前はそのままで良い。可愛いから。

 てかリリンよりダメなことしてる気がするんだけどさ。なんかカナラ相手だとこれといって罪悪感とか性に関することをしちゃってる嫌悪とかが薄いんだよな。

 やっぱカナラのこの感じが精神的快楽を刺激してるからだろうか? ん~……謎。

「ほう。考えたな……。それをやられると興が殺がれる」

 リリンは脇をすり抜けて先に部屋へ戻ろうとする。

 ふふん。カナラについては謎のままだけど俺の作戦勝ちだな。

 さっさと帰れ痴女。

「あ~そうそう。しばらくは異歪者とやらは活動しないらしいぞ。ネス曰く、前に異歪者があっさり殺された時に他の異歪者は最低でも一年程は力を蓄えるらしいからな」

「……」

 キス損じゃねぇか。俺もカナラもキス損じゃねぇか。時間取らせやがってふざけんな。

 自然治癒で良かったんじゃんその腕! ドーピングいらなかったんじゃん!!!

 しかも最後に置き土産まで残しおってからに。せめて謝れってんだよ。バカ!

「……ったく。悪いなカナラ急に……って」

「……」

 やっべ。風呂上がり+不意打ちだったからか気絶してる。

 戦えばめちゃめちゃ強いんだけどなぁ~……。

 なんでこいつ変なところで抜けた部分あるんだろ?

 カナラの謎は深まる一方である。

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