第155話
「ではこれより『煙魔様をたぶらかした害虫の駆除の仕方』についての会議を始めます」
「待て待て。ちょっとおかしい」
初日に来た広間で正座させられてさぁこれから事の真相を突き止めようって思ったらいきなり俺の処分は決定事項になってるじゃねぇか。
「五月蝿いぞ羽虫。
「……」
理不尽すぎる。俺今回はわるいことしてないぞ。比較的。
「……あの~セツ? 問い詰められる覚悟はそれなりにしたんやけど。まず何でこんな大事になってるかわからんのやけど……。その辺り説明してくれへんかな?」
お? ここで地獄の主の一声。たしかにこんな吊し上げみたいな状況は想定外だわな。どうせなら鶴の一声で解散させてくれても良いんだぜ?
「そもそも呼ばれた理由も聞いてないが。いきなし小僧の始末とは意味がわからん」
メズのヤツも乗っかってくれたか。他の連中も頷いてるし良い方向に転がってきてるか? この調子でそいつの暴走止めてもらえないかな。迷惑してますんで。
「
おい。捏造も甚だしいぞ。恥を知れ恥を。
「~~~~~~~~っ//////」
ほら煙魔が仮面してるのにさらに伏せて土下座みたいになってるぞ。良いのか? お前の大好きな煙魔様が土下座してるぞ。良いのか?
てかそんなあからさまな嘘を誰が信じ――。
「あ~そらいかん。殺しちまうべ」
「早計過ぎるわアホタレ。……が、とりあえず逃げれんように手足落としとくかのぉ?」
「まどろっこしいぞ。頭に杭でもぶっ刺しちまえ。なんなら俺がやろうか? いつでもやったるぞ」
「ぬぅあは! 姉御もとうとう女になったがか! めでたがめでたが! 赤飯炊け赤飯! ぬぅあははは!」
おいバカ共。あっさり戯れ言信じてんじゃねぇ。せめてこっちの言い分を聞け。
……やめろ。殺気を向けるな。武器を抜くな。
それとテメェのんきに笑ってる暇あったら止めろバカ。テメェが赤飯とか言うから煙魔がさらにダンゴムシみたいに縮こまってるぞ。最早土下座超えてないかこれ。良いのか。惨めになっていくぞお前らの姉貴分様。
「おうこらガキ。どこまでヤったんだ? お? 正直に話せ?」
誰か知らないけど鬼の一人が詰め寄ってくる。聞いてくるのは良いけどせめて喧嘩腰やめろよ。
「……いや知らねぇし。そもそもヤってねぇし。てかどうせなら本人に聞けば良いんじゃないか?」
「バッカおめぇ。自分の姉や母にどんなことシたか聞けんのか?」
「あ~……なるほど」
姉も母もいないからアレだけど。妹がいるから……まぁうん。聞けません。そもそもあいつまだ十五才だし。聞けるわけもない。
仮に「お前ヤった? どんなプレイ?」とか聞こうものなら殺されても文句言えないと思うわ。俺まだ死にたくありませーん。女の人知らないまま死ねませーん。
「で? ナニした?」
「いやだからしてないから答えられない。俺は綺麗なままなんです」
つか直接聞けないのはわかるけど。本人がいたら同じことじゃないの?
身内にヤったんだろとか言われたら恥ずか死ねるレベルだもんな。今ならお前にも同情の余地があるぞ。あとで慰めてやろう。たたじ性的じゃないほうの意味で。
「セツはヤったつってるぞ」
「俺が嫌いだから嘘ついてる説」
セツだけに。草。
……ごめんなさい。
「見苦しいぞ
だからなんで罰せられる前提なの? 判決下す前に裁判をしようぜ? もちろん無罪を主張します。
裁判長犯人は
「もう面倒だからさっさと吐け。そしたら命だけは助けてやるぞ」
「イチモツはかっさばくがな。男としては死ぬが命は助かるべ。ありがたく思え」
いやいやいやいやいや。それ普通の人間なら出血多量か痛みによるショック死もあり得るから。
俺だと……普通に回復しそうだけども。
よし。俺の不死性については黙ってよう。すでに物騒なところに不死身と知ったら本格的に拷問が始まりかねない。罪の有無とか真偽とか度外視で何されるかわかったもんじゃない。
いやすでに有罪判決くだされてるっぽいけどさ。まずそこ覆したい。……だけど証人になれそうな……っていうか当事者がなぁ~……。
「も、もう堪忍して……」
あの調子じゃあなぁ~……。
はぁ……。とりあえずできる限り自力で釈明を試みよう。
「つーか。人のこと糾弾してるけど。俺がなにしたよ。あんたはなに見たよ。他の連中もそこんところ知らないんだろ? まず第一発見者の話を聞こうぜ?」
「……一理はある。じゃあセツから話を聞いたら貴様も吐くな?」
「……逃れられない証拠があれば」
「よしわかった。じゃ、セツ。話せ。何を見たのか。正確にその時の状況をな」
「……わかりました。では話させてもらいます」
間を空け、鬼達は沈黙し聞き耳を立てる。心なしか……つか完全に好奇心丸出しの表情ばかりだな。
ふむ。単純に煙魔の常時が気になるのかもしれない。数千年のド筋金入りの処女だし。長い付き合いでもあるしな。そんな女の初体験の話は下世話だけど気になっても仕方ないか。……本人は不憫だけど。
そして、溜めに溜めた雪日の口が開かる。その口から発せられた言葉とは。
「そこの害虫が煙魔様と添い寝をしていたのです!」
沈黙。鬼たちは続き待ち。しかし一向に雪日の口から続きは聞こえない。そらそうだ。それしか見てないんだから。
「え~……それだけ?」
「この目で見たのは」
「いや含みのある言い方してるが……。添い寝だけでシてる所は見てないと?」
「見つけたのは朝だったので」
「その……痕みたいなのは? ヤったら色々残るもんだぞ?」
「見事に消されていました」
「着物が着崩れていたりもかの? 添い寝と言うのなら終わったらそのままって事もあるもんじゃ。初物散らしたとあっては尚更……のぉ?」
「してませんでしたね。流石煙魔様。直後であろうと着崩れを許さないとは」
「「「……」」」
色々足りなさすぎる雪日からの情報に冷静になり始めた鬼たち。
うん。これは雪日の暴走と気づき始めているな。顔がなんか苦々しくなり始めてるもん。いぶかしみ始めたようだな。
さて、やっと俺にとって良い風が吹いてきた。このまま立場を逆転してくれよう。
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