第75話
「ただいま~……」
今日も今日とてお勤め終了。疲れました。最近は一日置きにメニューが変わっているが、俺の契約者で手の空いてるのがいないからってことで今週はもう体力作りで染められてる。こればっかりは他のヤツらにも悪いと思ってる。ごめんな。
「にゃーにゃー!」
「おっと」
帰って早々に飛びついてくるコロナ。だから危ないだろって。
「にゃーにゃー♪ にゃーにゃー♪」
いつにも増して甘えてくるコロナ。まぁ半日近く離れてたから仕方ないか。
「おかえり」
「ただいま。コロナどうだった?」
ロッテも出迎えてくれたので早速今日の様子を尋ねる。パッと見、部屋やロッテは無事みたいだが、聞くまでは安心できない。
「特に問題はなかったぞ。むしろ大人しすぎるくらいだったよ」
い、意外。一番最初鼓膜を破壊しそうなほどの悲鳴を上げていたからてっきり……。あれか? 実はロッテには子育てスキルがあるのかな?
「へぇ~。ちゃんと良い子にできてたんだな」
「あぁ。自分で食事もできたし、こぼしても自分で拭いていたぞ。思ったよりも教えれば色々出来るんじゃないか?」
ほぉ~ん。発する言葉? とは裏腹に、普段の行動からも時々それなりの知性は感じていたからこれは意外ではないんだけど。ただ俺に対しては甘えて何でもやってもらおうとする節があるんだよな。逆に言えば俺以外相手だとあんまり頼りたくない……って面もある。って感じかな?
「とりあえずもう一日世話頼んで良いか?」
「了解した」
明後日は休みだし。もう明日一日だけ様子見てみよう。あ、リリンの時みたく外に連れ出してみるのも良いな。色んな物見せて新しいモノへの耐性がつけばラッキーって感じで。ロッテも前外出した時は打ち上げだったしあんま観光もさせてやれなかったからな。丁度良いから連れていこうかな。
「にゃーにゃー。んあ~」
「ん? なんだそれ」
呼ばれたのでコロナのほうへ向くと口を開けている。え、なに? なんか食わせろってこと? 腹減ってんならロッテになんか食わせてもらえば良いのに。
「あ~。実はかくかくしかじか」
困惑してるとロッテが説明してくれる。なるほど。俺とプリンを食べたいと。なんとまぁ可愛い理由。はいはいわかったよ。今日は思ったよか良い子にしてたようだからな。その程度のわがままは聞いてやるよ。
「じゃあ食うか」
「ん♪」
……良い笑顔しやがって。そんなに嬉しいか。一緒にプリン食うだけなのに。本当、俺のどこに好く要素があるんだろうねぇ……。不思議でならん。
「ほう。外出か」
「あぁ、演習が土曜だから日曜にでも出かけようかと思ってな」
「確かに外には興味がある。うん。わかった。付き合おう」
思い立ったが吉日。早速ロッテに提案し、了承を得る。一応コロナにも聞いてみるかな。
「ってわけで今度一緒に出かけるぞ。わかったか?」
「にゃーにゃー」
「ん?」
「あ~」
「……」
はいはい。そんなことよりもプリン食わせろってね。まぁお前は俺が行くところならついてくるだろうし、許可取る必要なかったわな。っと、もう一人にも聞いておくか。なんとなく答えはわかってるけども。
「リリン。お前はどうするよ?」
「パス。イベント走る」
やっぱりな。最近付き合い悪いからそうだと思ったわ。ゲームばっかりやりやがって。引きこもりまっしぐらだな。存在自体が希少で危険だからって自由にもほどがあるぞ。お国公認だしやることやってるから文句も特にねぇけどさ。お前はそれで良いのか……? 良いんだろうなぁ……。
「にゃーにゃー。あ~っ! あ~っ!」
「おっと。すまんすまん。ほれ」
「あむ。むふ~♪」
自然とコロナを膝に座らせてプリンを催促され食わせてるわけなんだが、たしかこいつ自分で食えるんだよな? なぁ~んで今も俺が食わせてるのか。俺が食わせてたら一緒には食べれないだろ。お前俺と食べたいんじゃなくて、俺に食わせてもらいたいから我慢してたんだろそうなんだろ?
「……?」
ジト目を向けるもコロナは首を傾げるだけ。あざとい。本気でわかってないのかもだけど。あざとい。あざと可愛い。……おっと誰かが俺に向かってどこぞの
「リリン。うっかりしてたんだけどよ」
「ん~?」
「コロナのことがあって最近循環も侵食もしてないだろ? 忘れないうちにやってくんね?」
「侵食なら欠かしてないぞ。我は今もお前を侵している」
「え」
夕食後、コロナたちが風呂に入ってる間にふと思い出したから頼んでみたんだけど、俺の知らないうちにやってたの? なにそれめちゃ怖い。
「お、俺知らないうちにまたどっか変わってんのか? まさか縮んだ!?」
「冗談だ。仮に侵食をしていたとしても縮むものか。あくまで我に近づくだけで我になるわけではないぞ」
なんだ冗談か。良かった。背が縮むとか心臓に悪いぞ。言ったのは俺だけど。
「で、循環だったか? ……フム。今は他者からの干渉も受けてないし問題ないだろう。やっておくか」
リリンの言い振りからしてコロナと繋がってたのはわかってた感じか。同時に二者からのなにかしらの干渉は危険って判断してたんかね。ま、リリンの考えは俺にはわからんか。それよりも遅れたぶんもやってもらわないとな。
「じゃあグリモア出すぞ」
「いらん。身構える必要もない」
「はい?」
一瞬言葉の意味はわからなかったが、数秒後に理解。前まではグリモアに触れ、繋がりを意識してから干渉、循環、侵食とやってきた。でも今、あの感覚がある。ゲームをしながら菓子パンを食べてるのにだ。あ、あいつ。最早集中せずにどころか、別のことやりながらできんのかよ……。
「相変わらずのとんでもスペックだな……」
「クハハ。いずれはお前も似たようなモノになるがな。脆弱でいられるのも今のうちだ。人間としての余生を今のうちに楽しんでおけ」
言い方がいちいち物騒だぞ。俺死ぬつもりはねぇからな? たしかに俺人間やめるつもりではあるけども。
「しかし、解せんな」
「……なにが?」
「いくらお前が我よりもマナが強いとはいえ。かなり侵食している。そろそろわかりやすい変化が現れるのではと思うんだが」
「変化……ね。身体能力は上がったが? 走っても前より疲れないぞ」
「……そういうことではない。魔法が使えないかという話だよ」
「って言われてもな……」
俺人域魔法使うと暴発して手足の先が弾けるからな……。試そうにもリスキー過ぎるんだけど。
「マナは前よりも送れるし、体には影響は出ておらんだろう? 今度簡単なモノでも試してみろ」
「ん~……」
「気乗りしないか?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「はは~ん? なるほど。我が悪かった」
「あん?」
「要するにビビっているということだろう? うん。仕方ない仕方ない。一歩間違えば大怪我。治癒速度が遅い生物だからな。怖がるのは必然だ」
意図してかはわからないが、ムカつく言い方だなおい。チープな喧嘩の売り方しやがってこの野郎。俺は買わねぇからな。バーカバーカざまぁみさらせ! それはそれとして気分転換はしたいところ。
「ちょっと散歩してくる。離れても問題ないよな」
「あぁ。物理的な距離は関係ない。あと数分で終わるしな」
「あ、そ。じゃあいってくる」
「何をしてくるかは知らんが、ヤツらが風呂から出る前に戻ってこいよ」
……まるで俺がただ散歩に出るわけじゃないみたいな言い方だな。別に普通に散歩してくるだけだっての。
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