71頁目 迷い道と古代の産物
処女で
手掛かりとなるのは、アネモネが持つ
その私の娘はというと、楽しそうに私の周りをフワフワと浮かびながら道案内をしてくれている。しかし、その一応下着が見えちゃっているから隠しなさい。
そう指摘すると……
「でも、お母様もやっていましたわ」
「あ、うん」
反論出来なかった。
元々剣なのだから、人としての
「こっちで良いのよね?」
「はいですわ」
「この道は気付かなかった……というより、今まで隠されていたということ?」
魔力探知でも発見出来ない程にまで高度な
「というか、本当に道ね」
「道ですわね」
そう、これまで一切の
整備されていると言ったが状態は悪く、ただ石が
「これも
「分かりませんわ」
私の疑問の言葉に、彼女も首を
魔法と向き合う際に、まず呪文から入る私達は言葉として理解しているのに対し、精霊であるアネモネは、魔法の存在そのものであるから言葉で理解するということが理解出来ない。
「んーと、こっちですわ!」
道は一本ではなくあちこち様々な方向へ伸びており、その先がどうなっているのかは分からない。恐らく認識
私には心強い味方がいるので、今のところ順調に進むことが出来ているらしい。らしいというのは
「ねぇアネモネ、違う道へ行くとどうなると思う?」
「分かりませんわ」
「即答だね」
「勿論ですわ。わたくしは、通れる道が分かるというだけで、通れない道がどうなっているかまでは分かりませんわ」
「そう」
時間の感覚がなくなってきた。上空に
もしたった一人でこのような状況に
「アレですわ」
「え?」
声を掛けられて目を向けると、いつの間にか先程までの道はなく、後ろを振り返ると石の道が一本だけ下に向けて伸びているだけであった。上を見ると太陽がいきなり大きく
「お母様?」
「あ、ごめんね」
呼ばれて前を向くと、何の
「見えませんの?」
「え?」
指差された場所へ目を
「もしかして、これも結界? ごめんね。私では見つけられない」
「分かりましたわ。お任せ下さいですの!」
そう言って、アネモネはずっと手に持っていた魔石に魔力を送り込む。すると、魔石が何かに反応するような
その耳鳴りのような音に思わず耳を
「何……これ……」
「分かりませんわ」
アネモネは知らないだろうが、私はこれを知っている。いや、この世界の私は見たことがないが、前世での私はテレビやインターネットなどでその姿を見たことがあった。
山頂部には、石造りの
「これって……ヒコウキ?」
この世界ではあり得ない物がそこにあった。
「それは何ですの?」
娘の疑問に答えず、フラフラとその存在に近付く。
そして実際に目の前にすると、その大きさはとても大きい。所々壊れており、とても飛べるような状態ではないが、これは間違いなく飛行機である。それも、一人乗り用のプロペラエンジンで飛ぶ戦闘機だ。
航空機に関する知識はないので、これと同一種が前世にもあったかどうかまでは分からないが、少なくともテレビでよく見た
全体的に
金属部の
実際に表面を軽く触れてみると、ボロボロと崩れそうなのだが何らかの作用でバランスが取れているのか、形を保持し続けている。
「状態保存の魔法……?」
これもまた知らない魔法だ。一応、前世の知識のおかげで、ある程度予想は出来るが、純粋にこの世界の住人ならまず予想すら出来ないだろう。そもそもここに辿り着ける人がどれだけいて、そしてこの物体が空を飛ぶ為の機械、乗り物であることを理解出来るだろうか。
しかし、その状態保存の魔法も完全ではないのか、それとも長い年月の中で劣化しているのか分からないが、完全な状態を保持することは出来なくなっているようで……
「ちょっとごめんね」
こうして少し力を入れると、簡単にビスケットを割るように壊すことが出来た。壊したといっても、ほんの一部分、主に錆となっている場所を選んでいるので、全体の状態への影響はないと思う。
「
「そうなんですの?」
私が手に持った
「これは多分、軽銀と呼ばれる金属と何か別の金属を合わせた、合金と呼ばれる物だと思うんだけど、これまで生きてきた中でこの金属は見たことも聞いたこともないわね」
そもそも軽銀すらも存在しているかも怪しい。ただ、こうして目の前にあるのだから、昔はあったのかもしれない。ここで問題となるのは、昔とは、一体どれくらい前であるかということだ。
「ちょっと周囲を見て回ろうか」
「お供しますわ!」
「うん、お願いね。何か気になる物とかあったら言ってね」
「はいですわ!」
私は娘を連れて、この巨大な石造りの
これは、中腹で見かけた石門と同じ方式のようだ。ということは、劣化具合に差があるが、アレとコレは同じ時代の物と想定して良いだろう。
「えぇと、認識阻害に状態保存、幻覚もあるか。でも一応幻覚魔法は今でもあるけど、ここまで高度な物ではなかったはず。それと岩人形。ここまで来ると、アレはここを防衛する為の存在だったと見て良いわね」
「きっとそうですわ。あの人型の何かこう感じ? とここ、何となく似ている気がしますの」
「そう。そうなると、今度は
「お母様ずっと同じような場所で、何日も歩いていましたわ」
「あ、もしかして、私は気付かなかったけど、ずっと結界の近くを
「恐らくそうですわ」
ここの遺跡のことについてどころか、ここに通じる道に関することさえ資料には残っていなかった。一体、どれくらい昔からあるのか想像も出来ない。
痕跡を見逃さないように、慎重に建物を見て回る。しかし、戦闘機一機分を丸ごと覆う程の大きさなので、時間が掛かってしまう。
手掛かりになる物はないかと、上に下に視線を動かしながら壁沿いに歩いて行く。すると、ある点で気になる物があって足を止めた。
「これって……」
それは何なのかは分からない。しかし、それは見たことがある物。いや、正確には似た物を見たことがある。それも前世ではなく今世でだ。そして、それはとても身近な存在であった。
「もしかして、これ、古代エルフ文字?」
代々ルキユの森のエルフに伝わる、既に失われ、誰も読むことが出来ないとされている文字、古代エルフ文字と思われる文字のような記号のような物が壁に
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