第132話 戦力外通告
ハビナとライーザさんがノルンの使者である亮汰(使者という言い方はなんかカッコいいので止めておくか)を撃破した。
「さて、あの
ノルン曰く東雲さんたちはハビナたちよりも少し遅れて塔の屋上にたどり着いたらしい。そしてこのゲームは先の二人を含め誰をどう鍛えるかのテストも兼ねていると言った。
俺としては皆が傷つくのを眺めているだけというのは辛いものがあるの。
しかしリオウにまでこのままグレインたちと戦っては皆死ぬと言われてしまうと悔しいがドラゴンたちに修行を頼む他ないだろうと思ってしまう。
「出来ればすんなりと行ってくれるのが一番いいんだが。」
東雲さんたちが戦っているモニターを見る。
東雲さんたちと対峙するシャラーグの竜形態は漆黒、かなりの大きさの体躯でノルンの数倍はある。大きさで言えばリオウよりもデカいだろう。
そんな中でも西城が前衛、東雲さんが後衛、スララが相手のブレスや火球を飲み込んだりして上手く立ち回りながら善戦している様に思えるが・・・
「それで?さっきの亮汰の様にこのドラゴンにも何か弱点の様な物を分かる様にしてあるのか?」
先程のハビナたちは亮汰が身に着けていたノルンから魔力供給を受けるためのネックレス、確か神器と言ってたな。それを破壊することによって亮汰の無敵スキルを破り撃破した。
東雲さんたちと戦っているシャラーグについても何か明確に倒す方法があるのだろう。そう思いノルンに問いかける。
「え?弱点?無いよ。そんなの。あっちはシャラーグが認めれば終わり、認めなかったらずっとやってるんじゃないの?」
「なんだと?じゃあ認められずにずっと戦い続け、下手したら、なんて事も・・・」
「うーん。まぁでもシャラーグの性格からしたらそれはないと思う。彼はああ見えて白黒ハッキリするタイプだから無理だと決めたらさっさと打ち切っちゃうんじゃないかな?悪く言えば頑固者って感じ?」
いや、ああ見えてって言われてもさっきチラッと見ただけだしほとんど覚えてないんだが。ホントにパッと見だけど寡黙そうで体中傷だらけのマッチョ、なんと言うか武人的なイメージだったな。
「なら一応今も戦っているという事はまだ不合格にはなってないって事か。」
「うむ。シャラーグは与えられた任務は確実にこなしてくれる。そのシャラーグが今だ戦っているのならあいつらから何かを感じているのだろう。」
リオウも人型でモニターを見ながら補足説明をする。ノルン同様、シャラーグに対してもかなりの信頼がある様に感じられた。
「おりゃあ![フォールダガー]!」
モニターを見ると西城がシャラーグの周りを自慢のスピードを生かしぴょんぴょんと飛び回りながら隙を見つけスキルを放つ所だった。
だがシャラーグの竜鱗は相当固いらしくガキィンと鉄を叩いた様な音が響きその刃を弾いてしまう。
西城のフォールダガーやリバースフォールダガーは切り付けたモノを重くしたり軽くしたりするかなりの強スキルなのだが、その効果は当てるだけでは駄目で実際に切らなければ発動しないらしい。今の様に弾かれてしまっては意味がないのだ。
「固ったぁ!ムキィ!なんやねん!罠と魔獣だらけの塔を必死に昇ったと思ったら最後はでっかいドラゴンやって!?ホンマにゲームやないねんから・・・ってまたブレス攻撃!?」
「危ない![マジックアロー:
自分のスキルが通らない事に苛立ち地団太を踏む西城にシャラーグが黒い炎の様なブレスを放った。
だが東雲さんのスキルである無数の土の槍が西城の目の前に何本も降り注ぎ壁となってギリギリでブレス攻撃を防いだ様だ。
ブレスの威力が高いのだろう。土の壁は相殺され一瞬で消えてしまったが東雲さんのナイスフォローだな。
「あっちっちぃ・・・!ふぅ、ありがとまゆまゆ!」
「もう香織!よそ見しないの!でも私のマジックアローのストックも少なくなってきちゃったなぁ。」
「全く、下半身にムダなお肉を付けてるからそうゆう事になるのです!」
「ちょっ!スララちゃん!ムダなってそれはちょいと酷いで・・・でもやっぱダイエットせなあかんかなぁ。」
スララの突っ込みに西城は悲しそうな顔をしながら自分の尻を確認している。
そんな事やってる場合じゃないだろ。でないとまたシャラーグの攻撃が・・・おや?シャラーグの動きがピタリと止まったな。どうしたのだろうか。
『・・・ノルン、それとリオウ様。この試練、打ち切らせて貰ってもよいでしょうか?』
「この声は!?シャラーグ、なのか?」
突如、現在俺たちのいる場所にシャラーグの声が響いた。
ここはノルンの精神世界と言っていたはずだがそんな場所に干渉できるのか。
しかしなんだ?試練の打ち切り?まさか先ほどノルンが言っていた様に東雲さんたちは認められなかったと言うのだろうか。
「えー。もう飽きちゃったの?見込みあると思うんだけどなぁ。もうちょっと頑張れないのー?」
「・・・シャラーグよ。お前の意思は尊重するつもりだが理由を聞かせて貰えるか?」
ノルンとリオウが尋ねる。二人の感じを見るとなんとかしてやってくれと言う感じではないな。あくまでもシャラーグが駄目と言うなら仕方がない、そんな意味に聞こえた。
『これ以上は時間の無駄です。リオウ様。』
そうぶっきらぼうに言い放つシャラーグ。なんだこいつは。カチンと来てたまらず言い返してしまう。
「おい!それじゃあ理由になってないだろ!お前にあいつらの何が分かるんだ!?」
『貴様・・・いや、あなたはリオウ様の契約者である須藤銀次だったか。あなたには細かく説明した方がいいのか?』
シャラーグが何言ってるんだこいつ、みたいな言い方をしてくる。
説明した方がいいか?だと?当たり前だろう。こいつ天然か。それともドラゴンはみんなこうなのだろうか。
「ああ。是非とも頼もうか。」
『・・・まずあの弓を使う女、あの女は合格だ。あの魔力弓には様々な可能性を感じる。能力的にも鍛えればかなり向上するだろう。それに若干だがリオウ様の力を感じる。それだけでおつりが来る。』
「東雲さんは半分リオウに隷属しているらしいからな。」
『・・・なるほど。道理でな。次にあの聖獣、あれは"器"だろう?なら使わない手はない。』
シャラーグが言うには東雲さんとスララは合格なのだと言う。スララの器と言うのは本当に何の意味があるのだろうか。まあそれは今はいい。という事は残る一人・・・
『最後のダガー使いだが・・・重力操作とは珍しい部類に入るがそれ以外では並以下。今後の戦いで間違いなく一番先に死ぬ。少し前にノルンが拾った加瀬亮汰の方がまだ面白い。よって不合格だ。』
「なっ・・・!西城だけが!?なんで――――」
淡々と語られた西城の戦力外通告に俺は言葉を失った。
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