第29話 竜言語魔法
翌朝、俺は先日ドラゴンと契約を交わした湖のほとり近くの木陰で目を覚ました。
「・・・ちっ・・・リオウのやつ。はしゃくだけはしゃいで寝ちまいやがった。寝るのは飽きたとかいってた癖に。」
────昨日の夜
「この力・・・今までの低スペックが嘘みたいだ!ステータスは・・・」
「ッッッ!?」
驚いた。レベルはあの遺跡での戦闘でかなり上がったようでLV25になっているな。それとは別に物攻、魔攻、防、敏、全ての数値の桁が増えている。
単純に今までの10倍のスペックになったという事だ。実際に戦闘してみないとわからないが。後は・・・
「おいリオウ。この契約者って称号とスキルに[差し伸べる手]ってやつと[血の契約]ってのが追加されているようだが何かわかるか?」
(契約者というのはそのままの意味であろう。そのスキル、もといステータスという代物は我にはよくわからぬ。自分で確認するがいいだろう。)
自分で試してみるしかないか。名前からして怪しい感じがするが。特に血の契約ってなんだよ。
(もし我と同じ特性があるのなら・・・いやある。そのスキルとやらの他にお前たち人間にとって面白い事が出来るであろう。楽しみにしておくがいい。)
スキルの他にだと?個体ごとの特殊能力ってやつか?それがスキルなんじゃないのか・・・
(詳しい事は我にもわからん。全てのドラゴンが我と同じことが出来るのか我だけが出来るのかはな。)
だから何が出来るか教えておけよ。
(後でやってみるがいい。そして驚くがいい。)
こいつウキウキなようだ。中にいてなんとなくわかるぞ。というか心を読むのをやめろ。一人で考え事も出来ないのは嫌だ。
(ふむ。プライバシーというやつか。いいだろう。緊急の時以外にお前の意識に触れる事はやめておこう。我と話したくば声に出すがいい。)
「ああ。頼む。」
独り言をぶつぶつ言う奴になってしまうが仕方がない。いざという時は心で会話すればいい。
(後は魔法か。銀次たちの使う精霊魔法も力の増幅によって相応の威力が出るようになっていると思うがもっといいものを教えておこう。)
「いいものだと?」
(うむ。竜言語魔法というものだ。精霊魔法より威力、汎用性共に上回ると自負している。)
「自負か。まるでリオウが創ったかのような言い方だな。」
(その通りだが。)
「そうか・・・」
魔法を創るだと?ひょっとしたら思った以上にリオウはとんでもない存在なのかもしれないな。
「それでどうやったらその竜言語魔法は使えるんだ?竜言語魔法とは精霊魔法と何が違う?」
(ドラゴンの多くはブレス攻撃を使うのだがあれは別に体内から直接ブレスを出しているわけではなく魔力を竜言語魔法という形に変えて使っているのだ。息を吸って吐くように、だ。)
やはりドラゴンはブレス攻撃を使うのか。俺のイメージ通りではある。
「俺もブレスを使う事になるのか。曲芸師のようだな。」
(何を言っている。銀次にはその手があるではないか。その左手はドラゴンそのもの。本来ドラゴンがブレスを使うのは体の構造上それが一番効率が良いからなのだ。竜言語魔法とは魔力の変換と詠唱を同時に行ってしまうという感覚だな。)
「わかったようなわからないような。」
(こういったものは慣れだ使っていかねば感覚はつかめぬだろう。生まれたてのドラゴンもしばらくブレスは使えんしな。魔法名そのものが詠唱の代わりになるように左手に魔力を集め変換してみよ。)
リオウに言われるままに淡く銀色に輝く左手に魔力を集めてみた。・・・お。魔法名が頭に浮かんできた。リオウがイメージを伝えてくれたのか。この魔力を魔法名をなぞるように変換して・・・
・・・ッッ!?ッ!?これはまずいぞ!止めるのは・・・無理か!
「がああああ!!『殲滅する
フォン
シュゴオオオオオ!!ウガアアアアアァァァ・・・
俺はとてつもない力を感じて湖に向けて水平に突き出した左手をとっさに真上に上げた。その瞬間まばゆく光輝く閃光が真上に噴出し天に向かいながらその先端を竜に変えていった。
先端の竜は雄たけびをあげたような気がしたが天に向かって消えていった。
「・・・・」
(どうだ感想は?威力も使いやすさもなかなかのものであろう。もっともここまで強力であったか定かではないな。銀次が使ったからか・・・やはりお前と我との相性がいいらしい。我が目を付けただけあるな。)
「何だこの威力は・・・」
とっさに上空に向かって打って良かった。あのまま真っ直ぐに打っていたらあの山の2つ3つは消し飛ばしていくような感覚があったぞ。
魔力も今までの精霊初級魔法を使った時よりは消費している気がするがすぐにリカバーで回復できる程度だ。リオウが言っていて改めて思うがこのオートMリカバーめちゃくちゃ便利だな。
その後いくつか竜言語魔法を聞いて試したがどれも普通に使える代物ではなかった。強力すぎるのだ。抑えて使う事を訓練しなくては使いづらくて仕方がない。
(ガハハハ!どうだ銀次。我の創りだした竜言語魔法は素晴らしいであろう。まぁ先程からそれを乱発しているお前も大概だがな。)
「使えないな。精霊魔法の方がまだいい。」
(なっ!ふざけておるのか!?事の次第によっては契約を解除するぞ!)
リオウはSEにガーンとついているかのような様子だ。俺の言い方も悪かったけどな。
「ふざけてるわけじゃない。はっきり言って便利だと思う。威力、燃費、発生速度と申し分ないと思う。ただな、異常に強力すぎるんだよ。」
(よいではないか。お前の目的はお前を裏切った連中を殺す事だろう?全てを飲み込んでしまえばいい。今のお前ならそれが出来るはずだ。)
「それじゃあ意味がないんだよ。俺は無関係の人間まで全て虐殺したいわけじゃない。なぜ俺はあんな目に合わなくてはいけなかったのか。それに全て焼き尽くしてしまったら俺は向こうに帰れなくなっちまうじゃないか。その辺りをはっきりさせるまでは俺は牙を研ぐ。」
(むう。面倒くさいのぉ。)
「仕方ないさ。他の勇者5人、王国の連中全員が俺を裏切ったとも考えづらいんだよ。」
なんとなくだが勇者の中では西城、亮汰あたりは絡んでると思えない。あいつらがそんな小器用な事出来ないだろ。
王国関係ではライーザさん、ギャレス、それに共に闘った兵士たち。中には散っていった兵士もいた。あの人たちだってそんな感じはなかったと思う。希望的観測になってしまうが。
本当は東雲さ、彼女も違うと信じたいが彼女は実際に俺を焼いた。これは否定できない事実だ。勇人と組んでいたのだろう。
(他の勇者5人?銀次と共にこちらに召喚された勇者は全部で5人のはずだが。)
「なんだと?俺たちは確かに6人で召喚されたぞ。」
俺、勇人、亮汰、東雲、西城、姫崎。全部で6人だ。
(我は勇者の称号を持つものを感知できる。間違いなく勇者の称号を持つものは銀次を含めて5人だ。仮に6人で来たとしても1人は勇者ではない。)
俺以外の誰かが勇者ではない・・・言い換えればこの世界にとっての勇者、救う者ではないという事か。というか俺は一応勇者という称号を持っていても裏切られるのだ。あまり意味のあるものではないな。
「それは後にわかるだろ。色々あって疲れた。少し休みたい。これから色々あると思うが互いの目的の為に頑張るとしよう。頼むぞリオウ。」
(うむ!我はしばらく直接手を貸すことは出来ぬと思うが何か出来る事があるか探ってみよう。封印のあいだ眠りすぎて眠るのは飽きていた所だったからな。)
そう言うリオウの言葉を受け俺は静かに目をつぶった。
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