第25話 襲来

ギャレスたちの待っている側まで近寄ってみるとバリバリッと電流がほとばしる様なクロス状の結界に圧倒されてしまう。遠くから見ても大きいと思っていたが近くでみるとなおさらだ。





鎖の様に見えていたものは物理的なものではなく魔法的要素で構成されているようだな。半透明で青白く光っている。





もうすぐ目の前という所で結界の前になにかプレートの様な物が浮かんでいるのが見えた。メーシーが駆け寄ってプレートを観察している。





「うん。やっぱり『異界の勇者降りし時、封印は解かれる。さすれば汝の敵を討ち滅ぼすだろう。』って書いてあるね。」





どう考えても異界の勇者って俺たちの事だよなぁ。俺もプレートを確認しようと結界に近寄っていった。





ブォ・・ン





鈍い音と共に俺たちの足元が光った。





「何だ!?メーシー!どうなっている!?王女様!こちらへ!」





「わわっ!わからないよ!まさか、罠!?でもそんなはずは・・・」





マジかよ!俺たちは反射的に一か所に固まりそして・・・








バキンッ!!!








何かが砕けるような音がして視界が真っ白に染まった。








数秒後徐々に視界が開けてきた。





「う・・・皆!無事か!?こ、これは・・・」





「勇人様?お怪我はありませんこと?!」





「魔獣の攻撃かと思ったぜ!」





「ウチらをおびき寄せて一網打尽って?趣味悪すぎやろ!」





「見て!結界が!」





一瞬この世界に召喚された時の事が頭をよぎったな。周りを確認してみると先程までいた人は全員無事のようだし周囲も変わった様子もない。さっきと違う所は目の前のクロス状に張ってあった鎖状の結界は無くなっているな。





「やっぱり書いてあることは本当だったんだね!罠とかじゃなくてよかったよ!」





メーシーは焦ったぁと額をぬぐっている。





「ともあれ結界は解けたみたいだな。どうする?このまま奥へ向かってみるか?」





「そうだね。本当はしっかりと調査してから向かいたいところだけど・・・いつ結界が戻っちゃうか解らないしその時もう一度結界が解けるかも補償はない。だから行ったほうがいいと思う。」





「私もメーシー先生の意見に賛成です。次に来た時にまた誰か犠牲になったら・・・」





エミリア王女も悲しそうな顔をしている。気丈に見せても国民が犠牲になった事がこたえているのだろう。





「そうだな。リスクがあるかもしれないけどここは進んでみよ・・・」








ベキ








「ん?勇人。何か言ったか?」








メリ








「いや?何か聞こえたようだが・・・」








ぺキバキ








「う、嘘だ・・こんな時に・・・なんで・・・こんな場所で・・・」





「どうしたんや?せんせ。顔真っ青やで?」








ベキベキメリパキ








「や、やつらだ!!外敵だ!!!」








バ キ゜ン








ピギャアアオアォォアアア!!!!








俺たちが奥へ向かおうとした所へ目の前の空間が裂けて言い表せない音と共に「外敵」と呼ばれた者達が次から次へと大部屋に現れ始めた。





「あ、あれが外敵なの・・・」





「うげぇ、気持ちわるっ!」





「生理的に嫌悪感がすごいですわ・・・」





「なんて数だよ!あれと戦うのか!」





「くっ・・・!」





グゲッ!グゲッ! ヴゥゥゥバアォオ! キシシシギギシシ!





なんだあれは。なんて表現していいか解らないが確かに以前メーシーが言っていたようにグロい。


一番数が多いのは魚のような体躯をして所々内臓の様なものをむき出しにしながら宙を泳ぐように移動している者だ。人間の上半身のみの形で体中ぐちょぐちょのべちゃべちゃで腕だけ異様に太い者、虫の様にカサカサ這い回っている者が数体ずついる。こいつらが小隊長みたいなものか。


どいつもこいつもおよそこの世の者とは思えない造形をしている。


だがどの外敵にも共通している事は顔?にあたるであろう部分が皆髑髏の様なものである事、体のどこかしらに核の様な物が見えるという事だ。





「ついに現れたか!数は・・50、いや100以上はいるか!全団員!気合を入れろ!陣形を整え退路だけは確保!一人とて死ぬことは絶対に許さん!!」





「スコットの分までやつらを駆逐し王女様、勇者様をお守りするんだ!魔法を使える者は残り魔力を気にせずぶっ放せ!」





あ、あれが・・・





やってやる!やってやるぞ!





スコット!見ててくれよ!





ライーザさんとギャレスの号令に騎士団員たちも始めはおびえる者もいたがやがて気合十分な戦士の顔になっていった。





いくぞー!おおおおお!!





ガィン!





グッ!固い!





ギシシシ!





ギィン!





け、剣が・・クソ!





騎士団の兵たちが勢いよく突っ込んでいき犬程の大きさの虫の様な外敵に剣を振るうがかなりの防御力の様でほとんどダメージが無いみたいだ。逆に鋭い爪で剣を折られてしまった。


核を狙いたいがカサカサカサと気味の悪い動きでなかなか当てられない。





「勇者さんたち!あいつらは今まで出会った魔獣より全然強い!生半可な攻撃じゃ削れないから核をよく狙って!」





メーシーから指示が飛ぶ。が、俺の刀にはまだ魔力がチャージさせていない。非力な俺ではやつらの核を砕くことはできないだろう。他の勇者たちのサポートに回るしかないか!





「王女様!出し惜しみしてる時間はないから上級魔法お願い!」





「わかりました!今までの戦闘を考えると打てて後2回です!魔力を練るのに少し時間を下さい!」





「皆!王女様が上級魔法打つまで少し耐えてね!」





「足止めか!デカい奴は任せろ!魔力持ってくれよ![パワーナックル]!」





ゴギィン!





「ぐぅっ!重めぇ!うぐ・・!」





ヴルア゛ァア゛!!





ドゴォ!





「ぐはぁっ!」





「亮汰!」





亮汰は上半身だけで浮いている巨腕の外敵にロックゴーレムの時よりも大きく吹っ飛ばされてしまった。





「クソがぁ!ガハッ!こいつロックゴーレムよりパワーが倍以上ありやがる!」





「虫みたいなんはウチが相手したる!いくで!そりゃあ!」





ガン!ガン!キィン!





キシシキシシシ!





「うぅ・・速さ比べじゃ負けられへんのや!」





西城も虫っぽい外敵と切り結んでいるがお互いにスピードがある分双方有効打が入らないようだ。





個々に相手をしていても埒が明かないな。やはり連携を取って確実に潰していくか周りの魚みたいな者の数を減らさないとジリ貧になる恐れがある。エミリア王女の上級魔法ももう少し時間がかかる様子だ。





「皆!防御結界を思いっきり張るから一旦下がって!」





「『大いなる土の精霊よ。我に従い盾と化したまえ。堅固なる壁となれ!<<アースウォール>>』」





メーシーの詠唱と共に防御魔法による壁が出来た。だが・・・





グゲッ! ヴゥゥゥオァァ! キシギシシ!





今すぐにでも破られそうだ。王女はまだなのか・・!





「ギャレス!アレを持て!」





「アレをですかい?ですが・・あね、団長!」





「いい!ここを乗り切らねば明日はない!後は任せるぞ。自信がないか?」





「くっ!わかりました!後は任せて下さい!・・・これを!」





ライーザさんがギャレスに命令すると何やら武器を渡したようだ。あれは・・・鎚?しかもかなりデカい。ライーザさんの得物って剣じゃないのか?





「勇者様方。私はこのスキルのあとはしばらく使い物にならないでしょう。だが少しでもやつらにダメージを与えて数を減らしてみせます。その後王女様の上級魔法を打ちなんとか打開して頂きたい!」





「団長殿・・・アレか・・・」





「な、何をするんですの?!」





ブルルヴォアア!! 





ガイン!ガイン!





「もう持たないよ!」





パリン





結界が破られたと同時にライーザさんは駆けだし高く翔んだ。





「やるしか!後はお願いします!はああああぁぁぁぁ!!![トールハンマー]!!!」





「行け!姉御!!」





ピシ、ピシピシ、バリバリバリィ!





ドゴオオオオォォォォオオオン!!!





ライーザさんのスキル、トールハンマーが炸裂した。トール・・雷神か。その名の通り外敵たちに雷が落ちたような電撃と衝撃を与えたようだ。





グ、グゲェェェェ!ギィィィイイイ・・・





「す、凄い威力だ・・・」





「これで範囲攻撃かよ!」





相当な威力だったのだろう100以上いた魚外敵が半分に減っている。核ごと吹き飛ばしたか。だが巨腕外敵と虫外敵は無傷とはいかないが数はそのままだ。





「団長の覚悟を無駄にするな!皆かかれ![気配断ち《ハイドアンドシーク》]」





スキルを使用したギャレスを筆頭に兵士たちも残りの外敵を撃破しようと突撃していった。





「私たちもやります![マジックアロー:ひょう]!」





「おおお![ダブルスラッシュ!]」





「それ![ポイズンウィップ]!」





ギィン! ゲゲゲッ! ザン! シャアアア! バシィ! ヴヴゥオォ!








だがやはり手強い。確実に少しずつ押されているようだ。


俺も初級魔法で援護しようとしているが乱戦プラス直撃してもあまり効果がなく役に立てていない。クソッ!頼みの刀もまだか。





「皆さん!お待たせしました!もう一度下がって下さい!巻き込まれてしまいます!」





ついに来たか!





「行きます!」





「『熱く迸る火の精霊よ。我に従い炎と化したまえ。炎を纏いてさらなる業炎を呼べ。其の業炎に選より炎帝アグニへの供物となれ。<<アグニートフレイム>>!!』」





ポッ





なんだ?まさか不発?





シュゴゴゴゴゴゴオオォォオオオオ!!!!





初めに小さい炎が敵陣の中に灯りその後地獄の業火の様な炎柱が立ち上った。


失敗したかと思ったな・・それにしてももの凄い火力だこっちまで熱風が吹き荒れてくる。





これでなんとか出来れば!

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