第26話 裏切り
「『熱く迸る火の精霊よ。我に従い炎と化したまえ。炎を纏いてさらなる業炎を呼べ。其の業炎に
エミリア王女の上級魔法でさらに敵の数を減らすことが出来たようだ。アグニートフレイムか。上級魔法ってのは戦略級の魔法の様だな。
だがまだ全滅まではいかない様だ。どれだけタフなんだよ。
「はぁ、はぁ、まだ動きますか・・・!」
「やっぱり魚みたいなやつ以外は核を直接攻撃出来ないと難しいみたいだ!」
メーシーの分析が正しいだろう。後は俺たちでなんとかするしかないな!
「むん。」
バキン!
ギシシィ・・・
「っ!?勇者様方!こいつらダメージが貯まっているようで今なら核に思いっきり当てられれば倒せますぜ!」
気配の希薄だったギャレスが自らの気配を濃くさせながらそう叫ぶ。ギャレスが虫外敵の意識の外から核を正確に点くと核が砕け虫外敵はキラキラと光と共に消えていった。
「よし!よし!団長殿の切り札と王女様の上級魔法を喰らってノーダメージなんてありえないんだ!皆もう少しだ!頑張って!」
メーシーの檄が飛ぶ。よし!俺の魔法でも倒せるかもしれない。
「<<ウインドカッター>>!×3」
カン!カン!カァン!
ヴァ?
駄目だ。俺のウインドカッターでは核を攻撃できても威力が足りな過ぎるみたいだ。刀はどうだ!?もうすぐ・・・っていつになったら貯まるんだよ!今やれなきゃ意味ないだろう!?
「邪魔や須藤!せんせ直伝の投げナイフ喰らえ![フォールダガー]スカイバージョン!」
ザクッ!
ヴォオオオアア゛ア゛!!
ズシン!
西城の投げたナイフが巨腕外敵に刺さりフォールダガーのスキルが発動したようだ。重力ナイフを投擲する事に成功したようで巨腕外敵は上半身のみの身体が地面に落ち動けないでいる。
やはりあのスキルを飛ばせるとかなり強力だな。
「今や!神宮寺!思いっきりいったれ!」
「ああ!任せろ![閃洸牙]!」
ザザザザザザン!!
バキン!
ヴァァアアアオ゛オオ゛・・・
「や、やった!やったぞ!」
西城の重力ナイフで動けない所を勇人の高威力連撃か。巨腕外敵も光になって消えて行った。
「勇人、西城!すまない!役に立てなくて・・・」
「ええよ!須藤は刀のチャージが終わるまでなんとか持たせとき!」
「・・・役・・ず」
「え?」
「銀次はメーシーさんかギャレスさんの所へ行っていろ!」
勇人が小さく言った事はわからなかったが皆の邪魔をしてはいけない。一旦引こう。
バキ゜ン
ピギャアァオオ!!
「なっ!?」
刀のチャージを待とうと思い後ろへ下がろうと思った瞬間、突如空間が裂けそこから人型であるが全身の皮膚がなく筋肉が丸見えで顔は髑髏、脳みそ丸出しで細身のレイピアを持った一体の外敵が現れた。
身体全体からドス黒いオーラの様な物を噴出させている。
ハ・・・イ・・ジョ・・ス・・ル
!?しゃべっ・・・
ザクッ!
「ぐあああっ!」
人型外敵は突如恐ろしい程のスピードでレイピアを俺の喉元を目がけて突いてきた。
なんとか体を捻ったはいいがよけきれず右の肩を突かれてしまった。西城だったら軽く避けられたのだろうかなんて考えてしまう。
「な、なにあれ・・・あんなの見たことないよ・・・ライーザ!あれ!見たことある!?」
「はぁ、はぁ、な、なんだメーシー・・・貴様が名前で呼ぶなど・・・っ!?い、いや!私もあんな外敵は知らん!なんだあの禍々しい気配は・・・」
「<<フレイムボール>>×5!」
ボフボフボフボフボフン
イ・・・ギ・・ハ・・イ・・ジョ・・・
「だ、だめだ・・・!ぐ、み、右手が・・・!っ!?た、貯まった!」
先程刺された右肩の痛みで刀を上手く握れない。がふと見ると鍔の竜の目の部分が赤く光っている。これでなんとかするしかない。頼むぞ!
「うわあああぁぁ![
ザンッ!
「や、やった!?・・・お、おいおい!なんだよ!それ!」
ロックゴーレムやゴブリンの様に×の字に分断されたと思いきや切れたは切れたが崩れ落ちず空中でそのまま再結合しやがった。マジかよ・・・どうすればいいんだ・・・
ブンッ!
ズバァ!
ブシュウ!!
「あああああああ!!」
今度はレイピアを素早く振り俺の胸に大きく一文字の傷をつけた。鎖帷子もろとも切り裂かれかなりの出血があるようだ。
痛てぇ・・クソッ・・・切られるってこんなに痛いのかよ・・・
「銀次!クソッ!こいつら!死にぞこないが!」
「須藤!こいつら邪魔や!」
「はぁ、はぁ、マ、マユミ様!ギンジ様に回復をお願いします!」
「・・・・・は、はい!待ってて銀次君!今回復するから!マジックアロー:
東雲さんがマジックアローで回復してくれるようだ。助かった。飛んでくる矢ってのは回復ってわかってても怖いもんだな反射的に手でかばってしまう。だがこれでまず距離を取って・・・
ドス
え?
ゴォォオ!
「ぐああああっ!!ほ、炎!?何で!」
回復スキルだと思い込んでいたマジックアローはとっさにかばった左手に突き刺さりその後、炎の渦をあげた。
「あ、あ・・・」
「まゆまゆ!何しとんねん!」
「真弓さん・・あなた・・!」
「ギンジ君!」
「ギンジ様!マユミ様!なぜ!?」
熱い・・・なんでこんな事に・・・東雲さん・・・
「ち、ちが・・わたし・・そんなつもりじゃ・・・ちゃんと回復を・・・いやああぁぁ!!」
「『深遠なる闇の精霊よ。我に従い彼の者達の
「闇魔法!?こんな時に誰が!?」
老人の様な声の詠唱が聞こえると辺りは暗い霧のようなものに覆われた。1m先程しか視界がなくなってしまった。いったい誰が。
「なぁ。銀次。気分はどうだ?」
突如目の前に勇人が現れ俺に話しかけてきた。
「ゆ、勇人・・・お前、こんな所に突っ立ってるとさっきのやつに・・!」
そうだ。さっきまでは俺の目の前に人型の外敵がいたはずだ。こんな所にいたら勇人まで・・・!
「お前はホントにぬるいな。人の心配してる場合じゃないだろう?お前の左腕・・もう使いもんにならなそうだぜ?いっそ楽にしてやるよ。」
「聖剣技[ダブルスラッシュ]!」
ザザン!
「あああ゛あ゛あ゛!!!勇人っ!なぜ!?なにやってんだよ!」
勇人は俺に対して静かに聖剣技を放ってきた。薄気味悪い笑顔を作りながら。俺は焼け焦げた左腕をとっさに前に出して受けた。俺の左腕は千切れて肘から下がなくなっていた。
・・・嘘だろ?東雲さんの誤射?でもあの東雲さんがそんな間違いを?だが現実に俺の左腕は焼かれた。勇人も狂気に満ちた笑みで俺の腕を切り飛ばした。なんで?あの外敵はどうなった?痛みが凄すぎるのと意味が解らない事だらけで頭がおかしくなりそうだ。
「五月蠅いな。周りに聞こえたらどうするんだよ。もうすぐ霧が晴れる。お前はこの世界で死ぬ。勇者の癖に低スペックで役に立つかも怪しいスキルを持っていても意味がないんだ。」
「な、何を言ってる・・!」
「少しだけ教えてやるよ。この世界に召喚された時に王が一人多いって言ってたの覚えているか?あれはお前だよ。こんな中途半端な能力で勇者が名乗れるわけないだろう?」
確かに王は召喚された日に去り際に一人多いなと言っていた。
「思い出したか?ステータスは勇者となっているかもしれんがそういう事だ。真弓もそれをわかっていてここでお前を殺した方が後々足を引っ張られずに済むって思ったんだろう?」
う、嘘だ・・・東雲さんがそんな事・・・ぐっ・・・意識が・・・
「残念だったな。王女もお前に矢を打つように真弓に言っていただろう?」
「それは回復の指示をしたんじゃ・・・」
「周りへの体裁だよ。王女が直接殺せ!なんて言えるわけないじゃないか。」
そんな・・・意味が解らない・・・
「これでお前は終わりだ。以前も言ったが後は全部俺が貰ってやるよ。おっと、この強力な刀も俺が上手く使ってやるから安心しろよ。じゃあな。おつかれさん。」
勇人はそう言うと俺の右手から刀を奪っていった。先の外敵に刺された傷が痛みほとんど力も入っていなかった。
「霧が晴れていくぞ!」
「須藤はどうなったんや!」
「ギンジ君!ひっ!う、腕が!」
「あ、あ、あ、ぎ、銀次・・君・・・ご、ごめんな、さい・・・」
「ギンジ様!<<フレイムランス>>!」
ゴバァア!!
・・・ハイジョ・・する・・
「駄目だ!効いてない!」
レ・・ギ・・ハ・・ジョ・・
「う、うわああああああ!!!」
グチャ
「いやあああああああああ!!!」
俺の左目は人型外敵のレイピアに突き抜かれた。かばう左腕ももう無い。
俺は人型外敵が出てきた空間の裂け目に、突き抜かれた衝撃でそのまま突き落とされた。
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