第3話 止まった時間

 どれくらいの時間、もしかしたらそれほど経っていないかも知れない……勝間田は突き刺すような寒さで目が覚め、慌てて腕時計を見る。時刻は『01:23:45』……


「しまったあ、終電に乗り遅れたあ!」

 もう一度腕時計を見るが、やはり時刻は『01:23:45』……


「おいおい……勘弁してくれよお。タクシー代、バカにならんし……ホテルに泊まるにも、クリスマス前の週末なんて死ぬほど高いし……」


 弱り目に祟り目の諺をこれほど具体化したシーンは余り見られない、と言いたいほどの残酷さに、勝間田は何とかならないものか、時計を見間違えたか?と何かにすがるような思いでもう一度腕時計を見る。時刻は『01:23:45』……!?


 さっきから全く時間が経ってない。腕時計まで壊れたか……とがっかりし、念のためと最後に一抹の期待を込めスマートフォンを胸ポケットから取り出す。時刻は『01:23:45』……!!


 全く時間が経たない。どういうことだ!焦っても答えは出ない。そうだ、周りの人に時間を聞いてみよう、と周囲を見回すが誰も居ない。


「きっと、いつもの悪い夢だろう……」


 最近の勝間田は売り上げノルマだけでなく、パート・アルバイトの人員確保のノルマにも追われ、酒の量と悪夢を見る機会だけが劇的に増えていたため、今回もどうせいつもと同じ悪夢の中だろうと余り気にしないことにした。そしてため息をつき、鞄を開ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る