少し、折り返す(A Skosh, Double Back)

阿佐ヶ谷大観

キャラバン

キャラバンの隊列がそろそろやってくる。大量の白インクを火にくべて歓待しなければならない。祭りに備え闘犬の名手がまぐわい川面に鮎が跳ねた。歌はウィジャボードの上のヘルメットを旋律に委ね、いつまでも強く強くしろさぎを揺らした。

俺はサンカの末裔だから白河の関を越えることができない。お前から来てくれ。無口なガイドを送り出すコミューンの入り口までのあぜみち。時計台の入り口は岩で塞がれ号令なしにどけてはならない。五線譜上の付点四分音符にとって黒リボンを結んだグリセリンに火をつける以外に集落へと通じる手立てはない。

グロッケン奏者は分岐器を粉々にした。いくつもの道があるためだ……。


キャラバンはコミューンを目指して微粒子の砂漠を滑り落ちていく。真夜中の丘で反響するシュプレヒコールに応える山猫がいる。


待つのだが、何もしないわけではない。いずれの日にも下水道から噴き上がり、茨の間隙を縫って飛ぶ蜜蜂が幾千もの糸を垂らすだろう。燻る煙にも見えるそれを注意深く縒りあわせる手がある。カエデの色をした炎が燃え上がり、樽の中から世界を見る必要はない。

ともかく生き延びることだ。

カエデの色をした炎が燃え上がり、樽の中から世界を見る必要はない。燻る煙にも見えるそれを注意深く縒りあわせる手がある。切り落とすことはできないか? いずれの日にも下水道から噴き上がり、茨の間隙を縫って飛ぶ蜜蜂が幾千もの糸を垂らすだろう。祭りに備え闘犬の名手がまぐわい川面に鮎が跳ねた。いくつもの道があるためだ……。


真夜中の丘で反響するシュプレヒコールに応える山猫がいる。

キャラバンはコミューンを目指して微粒子の砂漠を滑り落ちていく。

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