島根県

一人の人間の運命というのはそれが歴史に登場するものであれ、そうでないものであれ世界のうねりと大きく結びついているのかもしれない。島根県といえば異国召喚イコクショウカン以前には、隣県の鳥取県と47都道府県の下位争いをしており、出雲大社や石見銀山など世界遺産があるといっても信じてもらえないなど自虐を放言していた。のんきな、あるいは本当に平和な時代があったと言っていい。敦賀士郎アツガ シロウは島根の北端に位置する出雲市平田町に生まれた。三人兄弟の長男。弟はそれぞれシュウ平太ヘイタと言った。士郎の気性は勤勉で真面目。平時であれば地方大学に進学しそこそこの企業に就職するか、県職の公務員にでもなったであろう。徴兵された。全く予想だにしなかったことだがこの地域は日本全国においても退魔適正が高い人間が多かった。多くの前途ある若者が侍隊サムライ タイに徴発されるに至った。侍は古来、太刀を操り戦国から江戸にかけて興勢を奮ったと言われている。一方、国軍の兵科としての侍隊は炎や雷撃あるいは重力操作など物理法則を無視した強力な魔導を操る敵兵に対し、神風さながら敵の遠距離から放たれる魔法をかいくぐり、突撃、肉薄し退魔刀によって敵魔法使いを魔法もろとも両断するための兵科である。カミカゼ、あるいはほとんど特攻同然であった。が、むなしくも国軍にはそれ以外に敵兵に効果のある攻撃方法がなかった。核兵器をも防護する敵兵に近代兵器はすべからく無効化されたからである。

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