事の起こり
時は皇暦2082年に遡る。8月3日、日本列島は概ね快晴であった。米中露はそれぞれ揉めたり仲良くなったりしながら経済闘争を繰り返し、一方の日本はといえば、そういった隣国に板挟みにされながらも首都直下型地震とそれによる大津波に街を呑み込まれやしないだろうかとぼんやり考えていた。とはいえ、快晴の晴天とセミの鳴く声はいよいよ夏も大詰めであることを歌っていた。そんな時勢であった。
真っ先に異変を捉えたのは米軍の偵察衛星である。日本首都圏のやや北西に位置する地点からオーロラのようなまばゆい光が噴き出し始めた。米観測員は、化学プラントの事故としてもやや大きすぎる、もしや日本が核実験でも行ったのでは、と頭を巡らせるのも束の間、まばゆい光はみるみる広がり関東平野一帯を覆うほどになった。そしてしばらく光り続けた。時間にすると約30秒ほどであったろう。しばらくすると光が晴れてきた。観測員は一見、何が起こったか理解できなかった。衛星からの映像ではなんとなく街の色が変わったように見えた。灰色から茶色になった。それに緑も多い。そして、道路がなかった。観測員は迷わず手元にある埃に塗れた真っ赤な緊急通報ボタンを叩いた。朱い光と心臓に悪いうるさいサイレンが鳴り響く。突如、日本国の首都が消滅したのだった。首都圏を含む関東平野一体に魔法文明を持つ異国が出現したのである。もともとそこにあったものは消滅した。日本の首都機能は停止し、周辺地域の市民は逃げ惑うしかなかった。
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