第2話 Dark matter・・・
幸せ、それは形のない物。
手には掴めない、目に見えることの無い物。
僕は田辺勇次、高校一年生。
県内ではあまり進学者のいない山奥の高校に通っている何の変哲もない普通の高校生。
そんな僕は今、スマホを片手に、スマホのアプリで小説を書いているのだった。
僕は昔から乗り物が好きで、一番好きなのは車だった。
お目当ての車のゲームをやるためにわざわざ遠いゲームセンターに足を運び、無我夢中でお目当てのアーケードレースゲームにかじりついたりしていた。
残念ながらそのレースゲームはもう廃盤になり、どこのゲームセンターにももう置いていない。
昔のアーケードゲームが懐かしく、そして恋しくなり、ため息が漏れる。
今まであったものが無くなるという恐怖、悲しみ、虚空感。
なんて言ったらいいかわからない、胸が苦しい。
強いて言うなら"ノスタルジック"とでも言うのか、今の僕には分からなかった。
僕は自宅の自室のベッドの上でごろごろしながら、気がついたらそんな事を考えていた。
スマホには書きかけの小説の文字の羅列が、びっしりと画面の端の方まで広がっていた。
まるで作りかけの自分の世界の様だった、いや、作りかけの自分の世界の様と言わずしてなんと言うのだろうか。
作りかけの世界、文字の羅列、画面の中で世界を形成している様々な意味を持つ言葉たち。
手に取れば崩れてしまいそうなほど脆く、そして時空や現実世界までも歪ませるような未知数の力を秘めている言の葉と言う名の暗黒物質。
そんな恐ろしく、そしてどこまでも危険で美しい、そして如何なる人間も侵してはならない領域までも作ってしまう様な、そんな"言の葉"という名の暗黒物質を皆持っている。
僕は人間の脳のイメージを頭の中に浮かび上がらせる。
そう、確かネットで僕が見た画像にこんなのがあった。
人の脳細胞と銀河系の構造がほぼ瓜二つだったと言う事を証明する二枚の画像、これが何を意味するか、そう、もしかしたら人間の脳の中には"自分だけの世界が存在する"のでは無いかと僕は考えた。
確かに人それぞれ、考え方を始めとした、自分自身と全てが同じという人間は誰一人として存在しない、してはならないのだ。
そんな様な事を考えていたら、僕の脳に刻みつけられた記憶がふと蘇った、そう、あれは確か僕がまだ幼い頃の事──
僕と彼女と幸せと。 忠犬ポテト @exhaust-Eve
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