恋するメトロノーム

鉄鉱石

第1話

ここは埼玉県和合市。


東京のベットタウンとして『ださいたま』とかよく言われる田舎町よ。


そして私はそんな街の私立高校に通う高校三年生。


名前は米澤沙由佳。


今日は参考書を買うために田舎町としては品揃えの良い帖文堂書店に来ているの。





あら、あの制服は、同じ学校の男子生徒ね。


まあ、この辺だとここくらいしか大きな本屋は無いから同高生との接近遭遇率は高いから仕方ないけど。


美人過ぎるのも玉に瑕ね。


まあ、適当にあしらってあげましょう。


ところがその男子生徒は沙由佳に目もくれず通り過ぎてしまう。





「ちょっとそこのあなた!」





「え、俺ですか?」





「同じ学校の生徒ね?」





「そうですね、二年生の水島直人ですが何か?」





「悪いんだけど、手が届かなくてね、そこの本を取ってもらえないかしら?」





「いいですよ、どうぞ先輩!」





沙由佳は別にその本を取ろうとしていたわけではないが。


スルーされたのが気にくわず、思わず命令口調のお願いをしてしまった。





「ところで私の事は知ってるわね?」





「いえ、存じ上げません!」





「あら、さっき先輩とか言ってなかったかしら?」





「いや老け!」


直人はとっさに口を押えたが沙由佳は怒り狂っていた。


「大人っぽい女性に向かって老けてるですって?」


うわ、人に頼み事しといて軽い失言一つでマジおこだこの人。


大人気ねえ。


直人はそう思ったが口には出さず。


「あのですね、先輩落ち着いて!」


バシーン。


「いてえ!」


沙由佳は先程直人が取ってあげた参考書を叩きつけるとさっさと店を出て行ってしまった。


「怖え!」


まあ、そんな事より新刊のラノベを買いに来たんだった。


直人は本をもとの所に戻すとラノベコーナーに消えていった。












  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る