通行人A

ジェームズボンバークライシス

それは、僕がタバコ休憩していたときのこと

多分新卒だろう、目が少し垂れてて、鼻が少し丸めで縦に広がりを見せるその女性を僕は凝視していた。

髪は、茶髪のセミロング。

僕は彼女の顔を記憶した。


彼女が喫煙所から離れるタイミングで僕もタバコを吸い殻入れに捨てると、僕は彼女と同じエレベーターに乗った。


彼女は8階で降りた。

8階にある会社は、

・株式会社ユニコーズ 業務部

・有限会社エルリオンズ

・株式会社オルパスニール 銀座支店

そして会社ではないが

・レンタル研修室

といったところだ。


この会社もしくは、研修室が彼女の所属している所だ。

僕はその後、退勤中に一社一社のサイトを見た。そして見つけたモザイク越しで隠れた彼女の顔。

そして、求人票から勤務時間も大体把握した。

8時から17時、残業月40時間未満。


…今は繁忙期ではない。

だから、彼女は多分定時であろう。


僕はある日1時間早めに早退したいという旨を述べ、許可をいただいた。(僕は定時は18時出社だから)

こうして、僕は彼女をまちぶせる。

そして、彼女がエレベーターから降りると、僕は彼女の後をつけた。


最寄りの銀座駅から、銀座線で新橋へと向かう。

そして新橋から東海道本線。

なんとか彼女と同じ車両に乗り込むものの満員電車。

視界に彼女を入れ続けることができるか不安だったが、そこは、なんとか大丈夫だった。こうして、品川駅、川崎駅で乗客が一気に降りる、彼女は降りるタイミングで車両を変えていた。


そして僕も車両を変えた。

彼女は横浜駅で降りた。

電車を降り、エスカレーターで降り、改札を出ると右に出た。

横浜市営地下鉄、彼女は関内駅で降りると、長い通路をでてエレベーターで地上に出た。

こうして歩いてすぐの居酒屋で誰かと待ち合わせ、彼女にバレないように、尾行する。


こうして19:45分頃、彼女の友人らしき6人の若い男女が彼女のもとに来る。


こうして僕も店に入り、焼き鳥とハイボールを注文する。

どうやら彼女は酒を飲めないらしく、ノンアルコールビールとソフトドリンクでその時を過ごす。


こうして、手帳を取り出し、会話から、彼女の情報を箇条書きにする。


名前:はるな

愛称:はるぴ(はるちゃんなども)

学歴:詳しくは聞けなかったが、どうやら保育系短大らしい。しかし保育士の夢を実習中で諦め一般企業(株式会社エルリオンズ)

交際相手:いる。しかし、他にも彼女を好きな男性がいるらしい。

趣味のサークル:ダンスサークルMZ


などの情報が彼女や彼女を囲む友人達から漏れていた。

この情報さえあれば僕は彼女に近づける。

こうしてサークル情報を調べ、そしてサークル入会の希望書、さらに僕は現在ベンチャーで、オフィスが1室しかないエルリオンズに応募書類を送付した。


こうして、エルリオンズは、面接までいったものの残念ながら面接落ち。

しかし、ダンスサークルに入会することができた。

こうしてやっと元通行人Aだった春菜は、僕に尋ねた。

「もしかして会ったことあります?」

「いえいえ、初めてですよ」


彼女は鈍感らしい。

しかし、同じビルということで顔は何度か見合わせたのだろう。

こうして最初、下手くそなダンスをメンバーから笑われたものの、はるなは、優しくフォローしてくれた。


ある日、僕ははるなの情報を仕入れるために、はるなのクラスの同級生を装い、はるなのFacebookをフォロー。

こうしてはるな関連の情報はタイムラインで僕に伝わる。

そして僕はある情報をひたすら待ったのだ。


"はるな"が交際相手と失恋したという情報。

これさえわかれば僕は彼女を食事に誘える…


こうして半年が経った。

はるなは、すでにダンスサークルを辞めていたが、一応はるなとラインは交換していたため、タイムラインを確認した。

怪しまれないように夏季のダンス大会まではサークルに席を置くことにした。


こうして、サークルの一部のメンバーが、噂を立てていたのだ。

"はるな別れたってよ"


僕は、情報を聞き入れてから、1ヶ月ほど時間を置き彼女にライン電話をかけた。

そして食事に誘った。


…誘えた。成功だ。

食事に誘えればこっちのものだ。


こうして、僕は彼女の話に耳を傾ける、流石陽キャだ息を吐くかの如く言葉が出てくる。

低俗な凡人というのは、見ていて可愛いものだ。うへへへ

馬鹿だなぁと僕は思いながら、はるなの話を聞いていた。

別れた理由も付き合った理由も、今までの人生も本当に笑えるものだった。

こんなに美しい女の頭がすっからかんなんて僕は思わなかった。

それでも容姿は美しい。


食事だけして彼女と別れると、翌日から彼女が僕に依存するかのようにしつこめにラインを送った。

容姿だけしか取り柄のない彼女のラインがとても微笑ましい。

例えるなら猫のようだ。


そして僕らは2〜3回ほど"ただの"食事をしたのちに、ラブホテルへと彼女を誘った。

こうして、お互い全裸の僕らは、カバのような臭いの口内に舌を入れ、からめ合わせる。

全身をマッサージするかの如く彼女に愛撫をする。

そして、僕はローションで濡らした中指を彼女に膣に入れる。

ああガバガバ。

そして、何度か出し入れをしたのちに、薬指も加える。

こうして、彼女の膣から2本の指を出し入れする。所謂手マンというやつだ。

ガバガバに開いた馬鹿な女の膣にペニスを挿入すると、白目を剥き所謂"イキ顔"になった。


こうして、僕たちは交際する仲となかった。


もう彼女は通行人Aではない。


…僕の彼女…山下はるなだ。

そして来月スピード婚をする…

真島はるなに…もう少しでなるんだ。

僕はその幸せな瞬間を噛み締めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

通行人A ジェームズボンバークライシス @JAMESBOMBER_C

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る