第710話

『参加者の皆様、第一試練の突破お見事でございます!8個存在している扉の内6つしか開かれる事はありませんでしたが、どうぞ上の階へお進み下さいませ!』


「……どうやら結構な参加者が減っちまったみたいだな。」


「えぇ、こんな事を言うのは失礼かもしれませんが良かったですね。コレで最上階に行ける確率が更に上がりましたから。」


「だな……よしっ、それじゃあ鉄格子も無くなった事だし移動するとしますか。」


「はい!次も頑張りましょうね、おじさん!」


「あぁ、次は扉が4つしか無いからな。ロイドとソフィに会う為にも、ちょっとだけ本気を出すとしますかね。」


 首に手を当てながら頭を軽く左右に振った俺は、マホと一緒に階段を上がって行きその先にある扉を通り抜けるのだった。


「……この階も機械の人形から逃げながら扉を目指して行く感じなんでしょうか?」


「うーん、あのおっさんが2回連続で同じ事をやらせるとは思えないが……」


『さぁさぁ、生き残った参加者全員が次のステージに到着したみですねぇ!それではこの階で行われる試練の紹介をしたきますよ!皆様、前方をご覧下さいませ!』


「ん?前方って……うわっ!な、何だ!?」


「お、おじさん!壁が!!」


 いきなり足元がグラグラと揺れ出した事に思わず驚きの声を上げていると、廊下の壁が大きな音を立てながら変貌し始めた?!


『この階では秘宝を護る大量のトラップを掻い潜りながら奥にある扉を目指して頂く事になります!勿論、引っ掛かればライフを失う事になりますので!それでは皆様、張り切って~どうぞ!』


「……トラップか……こりゃまた中々に厄介そうだな。」


「えぇ、それに他の参加者から狙われる可能性もあるみたいですからね……これまで以上に慎重に進む必要がありそうです。」


「あぁ、とりあえずマホは俺の後ろから離れない様にな。」


「はい、気を付けて下さいねおじさん!」


「……了解。」


 息を深く吸い込んでから真っすぐ目の前に伸びている廊下を見据えた俺は、恐らくチュートリアル的な意味合いで変わったであろう壁の方にゆっくり近寄ってみた……そうしたら……


「わわっ!おじさん、壁から水が撃ち出されましたよ!」


「……なるほどね、こういう感じでトラップが発動していくのか。でもまぁ、一定の間隔で水が止まるみたいだからその隙に通れって事なんだろうな。マホ、俺が合図をするからソレに合わせて動いてくれるか。」


「わ、分かりました!」


 壁から射出される大量の水、その他にもどういう仕組みなのか大玉になって廊下の奥から転がって水や落とし穴なんていうトラップも用意されていたみたいだが俺達は順調なペースでそれらをかわしながら廊下を進み続けていた。


「ハッ、それなりに苦戦させられるかと思ったが予想してたよりも良い感じで何とか来れたな。」


「えへへ、今までおじさんは沢山の困難を乗り越えて来ましたからね!これぐらいは楽勝に決まっていますよ!」


「おいおい、あんまり買い被ってくれるなよ。別に俺一人の力でここまで来たって訳じゃないんだから……さ…………」


「おじさん?どうかしました……か………」


 トラップに注意しながら曲がり角を進んで行った次の瞬間、俺達は突如として目の前に広がった光景を見つめながら思わず立ち止まってしまっていた。


「……マジかよ……」


 何度目になるか分からない台詞を呟きながら苦笑いを浮かべた俺の視界には、底の見えない暗闇と天井から吊るされた幾つかの円形状の床……そして次の階へと続いている部屋があるであろう扉が存在していた訳で……


「え、えっと……これは……」


「……昔、アクションゲームをやってた頃に何度か見た事はあるが……こりゃあ飛び移る系の足場じゃねぇかよ……!」


 あのおっさん!イベントのコンセプトに関して嘘ばっかりじゃねぇかよ!それとも何か!?俺達の所だけこんな感じになってるって事なのか?!だとしたら思いっきり抗議させてもらいますけどもそれで良いんですかねぇ!?


『はっはっは!九条様、マホ様、どうかご安心を!例え落ちたとしても怪我をしない程度の高さになっていますからね!さぁ、頑張って下さい!急がないと後方から他の参加者が追い付いてしまいますよ!』


「チィ!段々とこの能天気な声にイライラしてきたんだが……!」


「お、怒ってはダメですよおじさん!それよりも今は言われた通りに急ぎましょう!ここを渡っている途中で狙われてしまったら逃げ場がありませんよ!」


「ぐっ!このイベントをクリアしたらテーラー・パークの顔面にウォーシューターを撃ち込みまくってやる!絶対にだ!おいマホ、ちょっとこっちに来い!」


「えっ、あっはい……キャッ!お、おじさん!?」


「しっかり捕まってろよ……行くぞ!」


 心の中に誓いを立てた俺はマホの事を抱え上げると、風魔法を全身に纏って足場を次々と飛び移り始めた!


『おぉっと!コレは凄いですねぇ!不安定に揺れる足場に臆する事なく一気に進んで行って……そのまま扉まで到達してしまいました!』


「ハッ、どんなもんじゃい!おいマホ、鍵は頼んだ。俺は参加者が来ない様に廊下の方を見張っとく。」


「わ、分かりました……はぁ……もう、急にギュってされたら…………」


「ん?何か言ったか?」


「ふん、何も言ってません!それよりもほら、扉を開けましたよ!」


「おう、ありがとうな。それじゃあ背中を撃たれる前に行くとするか。」


「えぇ……そうですね……」


 ……どういう訳だか不機嫌っぽいマホと開かれた扉を進んで行った俺は、さっきと同じ様な小さなロビーにあるベンチに腰を下ろして休憩する事にするのだった。

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